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【症例】猫乳腺腫瘍(頚背部皮膚移転)

症例提供:原田 智 先生(セラピスト動物病院)

猫乳腺腫瘍(頚背部皮膚転移)例におけるトセラニブ化学療法と
糖鎖製剤(TPG-1)併用による
副作用マネジメントおよびQOL 維持による長期治療継続の一症例

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背景

猫の乳腺癌は高齢の雌猫に多く、再発や転移が頻繁にみられる悪性腫瘍である。標準治療は手術療法であるが、術後再発した症例の予後は不良で、生存期間中央値は4~12ヶ月とされている¹。本症例は術後早期に頚背部皮膚への転移が確認される稀なタイプであったため、早期から抗がん剤治療に伴う副作用マネジメントを積極的に導入し、QOL を維持しつつ治療継続を図る必要があった。そこで、トセラニブ化学療法と低用量の糖鎖TPG-1 併用による副作用管理を行い、一定のQOL 維持と治療継続を可能にした例を報告する。

 

症例概要

動物種 猫(雑種)
性別 避妊済み雌
年齢 14 歳1ヶ月(診断時)
体重 診断時6.3 kg
飼育環境 室内飼育
診断 乳腺癌、病理組織検査で確定
特徴 転移性乳腺癌症例のうち、 皮膚転移を伴う稀なタイプ ( 発生率 2.7% 、73 頭中 2 頭 )

 

治療経過・併用戦略

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外科手術を施行し乳腺癌と診断され、手術により局所制御は達成したものの、術後に頚背部皮膚への転移が確認され乳腺癌の頚部皮膚への転移と診断し、トセラニブによる化学療法を開始した。同時に、補完免疫療法として糖鎖TPG-1を初期2 週間はガイドライン推奨量(2 倍量/1 日2 杯)、その後、体重が10kg 未満であったため低用量(1 日1 杯)で経口投与を併用した。

糖鎖TPG-1 は、フアイア(英名:Huaier、学術名:Trametes robiniophila Murr.)から水性抽出・単離された多糖タンパク複合体であり、フアイアの有効成分の一つとされる。TLR4 を介し、NF-κB およびMAPK シグナル経路を介した免疫増強作用(TNF-α、IL-6、NO をアップレギュレーション)による抗腫瘍活性を示すことが知られている³。
近年、ヒトの免疫療法としての臨床研究が国内外で進んでおり、ヒト肝細胞癌術後における1044 例ランダム化比較試験で再発予防効果⁴や、動物モデルにおける炎症性腸疾患での抗炎症⁵など、科学的根拠の蓄積が進んでいる。副作用は多量投与時の一過性の軽微な下痢とされている。

 

臨床経過・QOL 評価

糖鎖TPG-1 の導入後、食欲が改善し、飼い主からも評価された。術後補助的化学療法を実施した9ヶ月間、治療継続が可能であった。体重は徐々に減少したものの、食欲維持が良好で、QOL を一定以上に保ちながら副作用管理が成功した。

考察

本症例において遠隔転移確認後9ヶ月の生存期間は、一般的な予後中央値と比較して良好である¹。低用量の糖鎖TPG-1 の併用が、抗がん剤治療に伴う副作用の管理に寄与し、治療継続性を高めQOL を維持したことが示唆された。
皮膚転移を伴う希少なタイプの乳腺癌に対しても有用である可能性があり、治療戦略の一つとして注目される。

今後の課題

糖鎖TPG-1 の投与量および期間に関する至適設定と、多施設間研究に基づくQOL 指標の客観的評価が必要である。また、希少タイプの乳腺癌における有効性についても症例の集積が望まれる。

結語

本症例は、低用量の糖鎖TPG-1 の補完免疫療法が猫乳腺癌遠隔転移例における副作用管理とQOL 維持に有用である可能性を示した。今後、さらなるエビデンス蓄積と標準化された評価法の確立が期待される。

参考文献

1. McNeill C.J., Sorenmo K.U., Shofer F.S., Gibeon L., Durham A.C.,
Barber L.G., et al.
Evaluation of Adjuvant Doxorubicin-Based Chemotherapy for the
Treatment of Feline Mammary Carcinoma.
J. Chem. Inf. Model. 2009;53:1689–1699.
doi: 10.1111/j.1939-1676.2008.0244.x.

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2. Petrucci G, Henriques J, Gregório H, Vicente G, Prada J, Pires I, et al.
Metastatic feline mammary cancer: prognostic factors, outcome and
comparison of dierent treatment modalities—a retrospective
multicentre study.
J Feline Med Surg. 2021 Jun;23(6):549–556.
doi:10.1177/1098612X20964416. Epub 2020 Oct 20.

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3. Yang A, Fan H, Zhao Y, Chen X, Zhu Z, Zha X, et al.
An immune-stimulating proteoglycan from the medicinal mushroom
Huaier up-regulates NF-B and MAPK signaling via Toll-like receptor4.
J Biol Chem. 2019 Feb 22;294(8):2628–2641.
doi:10.1074/jbc.RA118.005477. Epub 2019 Jan 2.

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4. Chen Q, Shu C, Laurence AD, Chen Y, Peng BG, Zhen ZJ, et al.
Eect of Huaier granule on recurrence aer curative resection of
HCC: a multicentre, randomised clinical trial.
Gut. 2018 Nov;67(11):2006–2016.
doi:10.1136/gutjnl-2018-315983.

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5. Tang YF, Xie WY, Wu HY, Guo HX, Wei FH, Ren WZ, et al.
Huaier Polysaccharide Alleviates Dextran Sulphate Sodium
Salt-Induced Colitis by Inhibiting Inammation and Oxidative Stress,
Maintaining the Intestinal Barrier, and Modulating Gut Microbiota.
Nutrients. 2024;16(9):1368.
doi:10.3390/nu16091368.

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