【症例】脾臓血管肉腫のミニチュアダックスフンド
症例提供:神奈川県内 動物病院(獣医師)
クッシング症候群や僧帽弁閉鎖不全症などの基礎疾患を抱え、脾臓摘出ののち糖鎖製剤(TPG-1)の2倍量の給与を行い長期生存が認められた症例
糖鎖製剤(TPG-1)使用概要
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投与量 |
投与期間 |
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2倍量 |
約1,104日間 |
※犬猫用フアイア製品として
症例基本情報
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品種 |
ミニチュアダックスフンド |
| 年齢/性別 | 初診時10歳、確定診断時11歳 / 未去勢雄 |
| 初診日 | 2022年12月6日 |
| 主訴 | 前日からの嘔吐(食べたもの、水)、食欲不振、舌色が白く鼻水が出る |
| 既往歴/背景 | 胆泥症、クッシング症候群、僧帽弁閉鎖不全症(ステージB2) |
症例概要
【検査・診断】
初診時、重度の貧血(ヘマトクリット値:18%)が認められた。Day1に脾尾部に直径13cmの巨大な腫瘤が確認された。同日に脾臓摘出術を実施し、摘出組織の病理組織学的検査を行った結果、「脾臓血管肉腫(Hemangiosarcoma)」と確定診断された。
【課題の特定】
本症例は、犬の脾臓腫瘍のなかでも極めて悪性度が高く、術後生存期間が短いとされる「血管肉腫」であった。確定診断時の年齢は11歳と高齢であり、加えてクッシング症候群および心疾患(僧帽弁閉鎖不全症ステージB2)といった既往歴を有していたため、全身状態の管理が重要な症例であった。抗がん剤治療の継続や長期的なステロイド使用は副作用リスクが高く、積極的治療の限界と、ご家族が望むQOLの維持をいかに両立するかが最大の課題となった。
治療経過・併用戦略
導入期:初期治療と腫瘍負荷の低減
2022年12月に脾臓摘出術を実施した。
術後、微小転移の抑制を試みるため、抗がん剤(カルボプラチン:250mg/㎡)を3〜4週間に1回のペースで計3クール実施しました。また、併発疾患に対する内服薬として、ウルソデオキシコール酸(100mg / sid)、ピモペンダン(1.25mg / bid)、トレピブトン(6.6mg / bid)を投与していた。
調整期:免疫調整療法への移行
抗がん剤の3クール終了後のDay82より、再発防止および緩和ケアを目的としてフアイア糖鎖TPG-1を導入しました。確実な免疫調整を期待し、開始時点から標準の2倍量というアプローチを採用している。並行してクッシング症候群の管理としてアドレスタン(5mg / bid)を開始した。
維持期:QOLの維持と長期コントロール
フアイア糖鎖TPG-1導入以降は、ご家族のご希望や全身状態への影響を考慮し、ステロイドや追加の抗がん剤は使用しなかった。基礎疾患の管理薬とフアイア糖鎖TPG-1単独での免疫調整によって、長期にわたり安定した維持が図られた。
臨床経過・データ推移
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経過時期 (Day)※ |
フアイア糖鎖TPG-1用量 |
治療内容 |
画像所見・腫瘍評価 |
備考/状態 |
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Day0 |
- |
ヘマトクリット18% 嘔吐、食欲不振、舌色が白い |
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Day 1 |
- |
脾臓摘出術 |
脾尾部に直径13cmの腫瘤 |
血管肉腫確定 |
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Day 約30〜 |
- |
カルボプラチン投与(計3クール) |
- |
術後化学療法期 |
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Day 82 |
2倍量 |
既存薬継続 |
- |
フアイア導入 |
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Day 約90 |
2倍量 |
アドレスタン開始 |
- |
クッシング症候群管理開始 |
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Day 312 |
2倍量 |
既存薬継続 |
【CT】右側葉に径約0.5cm結節形成疑い。明らかな転移所見なし |
スケーリング実施 |
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Day 1051 |
2倍量 |
既存薬継続 |
【CT】肝外側左葉に4.6×5.1×5.4cm腫瘤、他複数。肺等に明らかな転移所見なし |
肝臓腫瘍の増大による体調悪化 |
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Day 1108 |
2倍量 |
- |
肝臓への転移病変が急速に増大 |
終末期への移行 |
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Day 1185 |
- |
- |
【死後生検】肝臓病変も肉腫と再確認 |
永眠(確定診断から3年4カ月) |
※初診日をDay 0として算出。
【変化の要約】
悪性度の高い血管肉腫に対し、外科手術および初期の抗がん剤治療を経た後、フアイアの給与を開始した。以降、ステロイドや追加の抗がん剤に依存することなく副作用を回避しながら、画像上でも約2年10カ月(Day 1050頃)まで明らかな転移や腫瘍増殖が抑制された可能性が示唆される。長期間にわたり穏やかな外観と活力を維持し、良好な日常生活を継続できた症例である。
考察
治療のポイント:本症例は、一次診療の現場において「積極的治療(抗がん剤)の限界」と「ご家族のQOL維持への希望」を見事に両立させた一例である。脾臓の血管肉腫は、化学療法を併用しても生存期間中央値が145〜180日程度とされる厳しい疾患だが、本症例では3年4カ月という生存期間を達成した。クッシング症候群や心疾患により治療選択肢が狭まる中で長期コントロールができた症例と示唆される。
併用による相乗効果:本症例では、化学療法によって初期の腫瘍負荷を減らした後、維持期における免疫調整としてフアイアを導入するスキームが採用された。特に注目すべきは、導入時から「標準の2倍量」を積極的に継続給与した点である。抗がん剤の副作用やステロイドによる医原性クッシングなどのリスクを完全に回避しつつ、高用量の糖鎖製剤による免疫調整能を最大限に引き出せたことが、長期の腫瘍安定に大きく寄与した可能性が強く示唆される。
本症例は、予後不良な腫瘍疾患において、標準治療(化学療法)を完遂した後にフアイア糖鎖TPG-1を取り入れることが、生存期間の延長とQOL維持に貢献する可能性が示唆される。また、ステロイドの減薬や維持に苦慮する免疫介在性疾患(IMHAやGMEなど)への応用も含め、コンプライアンスを保ちながらご家族に希望を提供できる選択肢として、今後のさらなる知見の蓄積が期待される。