【症例】難治性蛋白漏出性腸症(PLE)の柴犬
症例提供:角山 優輔 先生(ゼファー動物病院)
ステロイド副作用に苦しむ柴犬のPLEに対し、加水分解食・シクロスポリンと糖鎖製剤(TPG-1)の併用によりプレドニゾロンの減薬とQOL改善(筋肉量増加、毛質・毛量回復)を達成した一例
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糖鎖製剤(TPG-1)使用概要
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投与量 |
投与期間 |
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4倍量 |
14日 |
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2倍量 |
70日 |
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3倍量 |
160日 |
※給与開始時は4倍量として開始し、その後2倍量、3倍量と給与した。
※犬猫用フアイア製品として
症例基本情報
品種:柴犬
性別:避妊雌
生年月日: 2017年7月2日
初診日:2025年1月22日(初診時7歳)
診断:蛋白漏出性腸症(PLE)
主訴:他院にてPLEと診断されステロイドで管理されていたが、筋肉量減少に伴う整形外科疾患(前十字靭帯断裂、半月板損傷、股関節脱臼)の悪化、鱗屑、被毛粗剛などの皮膚症状によりQOLが低下していたため来院。
症例概要
初診時、Alb 2.8 g/dL(RI: 2.6–4.0)とコントロールはされていたが、ステロイド(プレドニゾロン)への依存度が高く、漸減すると軟便が生じ臨床症状が悪化する状態であった。一方で、長期間のステロイド投与による医原性クッシング(筋力低下、被毛粗剛など)によりQOLが損なわれており、「PLEの内科管理の適正化」と「全身性ステロイドからの離脱(休薬)」の両立が最大の課題であった。
治療経過・併用戦略
ステロイドの副作用を回避するために、治療を適正化しつつもステロイドの減量を行い治療を進めた。
A.多剤併用
- 免疫抑制剤の併用:
シクロスポリンを併用し、ステロイド減量に伴う再燃リスクを抑制。 - プレドニゾロンの漸減:
免疫抑制剤の併用、その他治療と組み合わせながら減量し、最終的に完全休薬を目指した。
B. 免疫・代謝・腸内環境サポート
薬剤のみでは制御困難な腸管バリア機能の修復と免疫調整のため、以下の追加治療を導入した。
- 加水分解食への変更
- フアイア糖鎖TPG-1:
Day 113付近より開始。免疫調整作用を目的として使用。Day 197より2倍量から3倍量へ増量を行った。 - プロバイオティクス:
腸内細菌叢(マイクロバイオーム)の正常化により腸管バリア機能の補強を行った。
臨床経過・データ推移
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経過日数 |
日付 |
体重 |
Alb |
プレドニゾロン |
備考 |
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Day 1 |
25.01.22 |
10.84 |
2.8 |
7.5mg/head/SID |
初診。シクロスポリンを開始し食事をz/d®️に変更。 |
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Day 22 |
25.02.12 |
10.56 |
3.1 |
1休3日間投与 |
Alb良好。ステロイド減量開始へ。 |
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Day 50 |
25.03.12 |
10.80 |
2.9 |
EOD |
さらにステロイドの減量実施 |
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Day 71 |
25.04.02 |
10.86 |
2.6 |
q96h |
状態良好であるためさらにステロイドの減量 |
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Day 92 |
25.04.23 |
10.60 |
2.4 |
q96h継続 |
体重・Albがやや減少しているため、 |
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Day 113 |
25.05.14 |
10.96 |
2.6 |
q96h継続 |
フアイア糖鎖TPG-1導入(2週間4倍量、その後2倍量) |
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Day 141 |
25.06.11 |
11.30 |
2.9 |
STOP |
ステロイドの休薬 |
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Day 169 |
25.07.09 |
11.50 |
2.5 |
q96h継続 |
シクロスポリンの投与量のミスに気づいたため、 |
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Day 197 |
25.08.06 |
11.74 |
2.5 |
5mg/headに減量 |
フアイア糖鎖TPG-1を3倍量に変更し、ステロイド減量 |
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Day 291 |
25.11.08 |
11.74 |
2.8 |
5mg/head,q96h |
シクロスポリンの休薬 |
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Day 354 |
26.01.10 |
11.92 |
3.0 |
休薬 |
ステロイドの休薬の実施 |
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Day 382 |
26.02.07 |
11.3 |
3.0 |
休薬 |
フォローアップ実施中 |

▲Day1の様子:全身の削痩が認められ、被毛粗剛も認められる。


▲Day117の様子:TPG-1投与開始時、被毛粗剛 筋肉量の減少

▲Day148の様子:TPG-1投与約28日後、背+腰のラインで被毛量が増加

▲Day291の様子:TPG-1投与半年後、全体的に毛量・毛質改善が認められる。
考察
本症例では、PLE管理のため長期間にわたりプレドニゾロン単剤で維持されており、その結果として医原性クッシング症候群を示唆する所見(筋力低下、被毛の粗剛化、脱毛など)が問題となっていた。PLE発症時には発熱も認められていたことから、食物抗原への反応も考慮し、導入時には加水分解食やシクロスポリンも併用した。しかし、プレドニゾロンを漸減すると軟便が再発したため、プレドニゾロン依存性の高い症例と考えられた。
そこで、プロバイオティクスおよびフアイア糖鎖TPG-1を順次併用したところ、被毛状態の改善、血清アルブミン濃度の上昇、さらに食事量に変化がないにもかかわらず明らかな体重増加が認められた。加えて、本症例はもともとMPLや股関節脱臼といった整形外科疾患を有しており、プレドニゾロンの減量が可能となる以前には跛行エピソードが間欠的に認められていた。しかし、内科的管理が安定し、プレドニゾロンの漸減が可能となって以降は、跛行はみられなくなった。これは、プレドニゾロン漸減に伴う筋量回復により関節の安定性が改善し、歩様が安定した可能性が考えられた。
来院当初、飼い主は整形外科疾患に対する外科手術も一定程度考慮していたが、現時点ではその必要性は低いと判断されている。また、一般状態の明らかな改善も得られており、飼い主の満足度は非常に高かった。
以上より、本症例は、プレドニゾロン依存性の高いPLE症例に対して、標準治療にフアイア糖鎖TPG-1を併用することで、多角的なアプローチによる良好な内科的管理が可能となり、さらにプレドニゾロンからの離脱につながる可能性が示唆された。
