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【症例】若齢性蛋白漏出性腸症(PLE)のミニチュアシュナウザー

症例提供:角山 優輔 先生(ゼファー動物病院)

若齢犬のPLEに対し、フアイア糖鎖TPG-1の併用を行ない、最終的にステロイドの休薬と体重増加・筋肉量の増加が認められた症例

 

糖鎖製剤(TPG-1)使用概要

投与量

投与期間

1倍量

15日

2倍量

60日

3倍量

180日(継続中)

※給与開始時は2倍量として途中1倍量、その後3倍量まで増やした。
※犬猫用フアイア製品として

症例基本情報

  • 品種: ミニチュア・シュナウザー
  • 性別: 未去勢雄
  • 生年月日: 2024年4月26日
  • 初診日: 2024年11月13日(当時約7ヶ月齢)
  • 既往歴: 特記なし
  • 予防歴: 6種混合ワクチン(24.8.23)、狂犬病ワクチン(24.8.23)、フィラリア・ノミダニ予防(シンパリカトリオ®️)実施済み
  • 主訴: 同居犬(6.7kg)と比較して痩せている、体重が増えない。

症例概要

    【診断プロセス】

    初診時、体重5.1kg、BCS 3/9、MCS軽度低下と削痩が認められた。血液検査にてAlb 2.4 g/dL、TP 4.9 g/dLと汎低蛋白血症が認められた。
    若齢であること、消化器症状が認められなかったことから先天性門脈体循環シャント(cPSS)も考慮に入れつつ、その他の疾患の除外のために精査を行った。検査・臨床所見より、アジソン病、膵外分泌不全、消化管感染症および先天性代謝異常症は否定された。臨床病理検査所見から蛋白漏出性腸症(PLE)とcPSSが多くの点でオーバーラップしていたため、両者の鑑別を要した。その後、CT検査(Day39実施)および内視鏡生検の結果、蛋白漏出性腸症(PLE)/ リンパ管拡張症と確定診断された。 

    【初期所見】

    • 身体検査: 意識清明、口腔粘膜赤色、MCS 軽度低下  BCS 3/9、体重5.1kg。
    • 血液検査: Alb 2.4 g/dL(RI: 2.6 - 4.0 ) , TP 4.9 g/dL(RI: 5.0–7.2),ALP 438 U/L(RI: 24–117) 。 BUN 6.7 mg/dL(RI: 9.2–29.2)   、NH3 118μg/dL (16 - 75)基礎コルチゾール 2.9μg/dL、c-TLI 25.9ng/mL(5≦)、TBA pre2.1→post 5.4、尿中代謝産物異常なし、血清コバラミンは200 ng/ml(252-906)、葉酸3.2 μg/mL(7.7-24.4)
    • 糞便検査および下痢パネル(IDEXX):陰性
    • 尿検査:UPCは0.12(RI: < 0.5) と正常範囲内であり蛋白漏出性尿症(PLN)は否定的であった。
    • 消化器症状: 下痢や嘔吐はなく、主訴は削痩のみであった。

    治療経過・併用戦略

    治療目標を「血清アルブミン値の正常化」および「成長期における適正な体重増加」とし副作用が懸念されるため「ステロイドの完全休薬」を目指した。

    【治療プロトコル】

    1. 初期治療(寛解導入期)(Day78)
      • ステロイド: プレドニゾロン(Pred)0.89 mg/kg/day (SID) で開始。
      • 補助療法: コバラミン(1Cap/EOD)、オメプラゾール(0.89mg/kg/BID)、モサプリド(0.45mg/kg/BID)
      • 維持・減量戦略 ステロイドからの脱却を図るため、フアイア糖鎖TPG-1とプロバイオティクスを併用した。
      • 免疫調整: フアイア糖鎖TPG-1(Day186より2倍量で開始した)。
      • 腸内細菌叢ケア: プロバイオティクス、Day290より1/2包 SID。
      • 食事療法:加水分解食(アミノプロテクトケア®️)
    2. ステロイド減薬スケジュール
      • Day 94〜: アルブミン値の安定を確認しつつ、Predを3日投薬1日休へ減量、その後EOD(隔日投与)へ移行。
      • Day 136〜: QOD(3日に1回)およびDay 157より用量半減を実施。
      • Day 234: プレドニゾロンの完全休薬を達成

    臨床経過・データ推移

    【血液生化学的評価】

    • Alb(アルブミン): 治療開始時Day78 2.7 g/dLから速やかに上昇し、Day 94には3.3 g/dLへ到達。以降、ステロイドを休薬後も3.0 g/dL付近で安定推移している。

    【身体的評価・QOL】

    • 体重・BCS・MCS: 初診時5.1kg(BCS 3/9)から順調に増加し、Day136にMCSが中程度まで増加、Day 262には7.5kgに到達し同居の子と同じくらい、またはそれ以上の体重に到達した。
    • 外観・活動性: 被毛の状態が改善し、筋量の増加も認められた。QOLは高い状態を維持している。
    【主要な経過データ抜粋】

    経過日数

    日付

    体重 (kg)

    Alb (g/dL)

    Pred投与

    備考

    Day 1

    24.11.13

    5.1

    2.4

    治療開始前

    初診時

    Day 38

    24.12.20

    5.3

    2.4

    治療開始前

    CT検査実施

    Day 78

    25.01.29

    5.6

    2.7

    PLE治療スタート

    0.89mg/kg/SID

    内視鏡上下検査実施

    Day 115

    25.03.05

    5.98

    3.7

    EODに変更

    漸減実施、体重増加

    Day 180

    25.05.09

    6.52

    2.6

    QOD+半量

    フアイア糖鎖TPG-1併用開始(2倍量)

    Day 234

    25.07.04

    6.9

    2.9

    中止

    完全休薬実施

    Day 262

    25.08.01

    7.2

    2.8

    中止

    フアイア糖鎖TPG-1を3倍量に増量

    Day 318

    25.09.26

    7.5

    2.7

    なし

    プロバイオティクス(1/2  SID)継続中

    Day 445

    26.01.31

    7.5

    3.0

    ※検査機器IDEXXへ変更

    なし

    プロバイオティクス(1/2  SID)継続中

    PLE_02-02

    考察

    本症例は若齢発症のPLEが疑われ慎重に診断を行い、代謝異常症を含め、その他の鑑別疾患の除外を行った上で最終的にPLEと診断した。

    治療導入にはコバラミン、加水分解食およびプレドニゾロンを用いた。それらへ良好に反応したことからPLEの診断の裏付けと、プレドニゾロンを漸減するとアルブミンが減少したことから、プレドニゾロンへの依存性は高いと判断し、可能な限りプレドニゾロンに依存しない治療を模索した。

    プロバイオティクスとフアイア糖鎖TPG-1の併用療法で最終的にプレドニゾロンの休薬とアルブミンの維持が可能となった。 通常PLEではプレドニゾロンの休薬を達成することは難しいが、本症例では休薬することが可能となった。プロバイオティクスとフアイア糖鎖TPG-1を併用しているため、フアイア糖鎖TPG-1単独の治療効果は判定できないものの、PLEの病態を考慮して多角的に加療する重要性を感じた。

    従って、従来のPLEの標準療法に免疫調節作用を期待してフアイア糖鎖TPG-1を併用することで、良好な反応を得ることが示唆された。

    本症例は最終的に、被毛改善・筋量増加・正常な成長(体重増加)が達成され、若齢犬のQOLを損なうことなく内科管理が可能となり、飼い主様の満足度が高かったため、PLEに対して併用する可能性を感じた。

    ▲Day1 の外貌様子 
    BCS 3/9 、MCS軽度低下と削痩が認められる。

     

    ▲Day445 の外貌様子

    症状の安定化により、MCSが中程度まで回復している。