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【症例】顔面腫瘤のトイプードル

症例提供:北海道内 動物病院(獣医師)

手術不能な眼瞼腫瘤を呈した高齢犬に対し、糖鎖製剤(TPG-1)を併用し腫瘤縮小とQOL維持を達成した一例

糖鎖製剤(TPG-1)使用概要

投与量

投与期間

4倍量

14日投与後、一時中止しその後約90日

※犬猫用フアイア製品として

症例基本情報

 

品種・性別 トイ・プードル、避妊雌
年齢 2012/05/14 当時13歳
既往歴・治療歴 糖尿病:5年以上継続、インスリン管理中
循環器疾患:心肥大、心雑音、肺水腫
その他:両頬骨部の皮膚壊死
主訴 右眼瞼の腫瘤による閉眼不可

 

症例概要

    診断プロセス


    他院にて数年前より「手術不可」として経過観察されていた右眼瞼腫瘤(初診時10円玉大)を主訴に来院 。2025年2月に外科的摘出を実施したが、同年6月に鼻側眼瞼に再発を確認した 。

    初期所見


    再発した腫瘤は急速に増大し、2025年7月には顔面の筋層まで固着。外科的切除には顔面筋層の広範な切除が必要と予測される一方、循環器状態(心肥大・心雑音)の悪化が認められたため、麻酔リスクから手術不可と判断した。腫瘤は約3ヶ月で左右の眼球を覆い尽くすほどの病変へと成長し、表面からの出血と化膿を伴う外貌を呈した。

    治療経過・併用戦略

    治療プロトコル


    根治的治療が困難な中、QOLの維持を目的としてフアイア糖鎖TPG-1を導入した。

    1. 用法用量: 4倍量で2025年12月29日開始。
    2. 維持戦略: 腫瘤の処置(出血・化膿に対しての抗生物質・洗浄)、フアイア糖鎖TPG-1は2倍量をBIDで給与。
    3. 並行治療尿病(インスリン治療)、循環器疾患(ピモペンダン、フロセミド)、抗生剤

     

    臨床経過・データ推移

    身体的評価・QOL


    導入7日後: 左右の眼球が半分見える程度まで腫瘤が劇的に縮小し、厚みも約半分に減少した 。
    また再発時に認められていた、化膿臭が激減した。

    中断・再開時の反応: 良化傾向であったため、飼い主様により投与が一時中断された。腫瘤の再増大傾向が認められ化膿臭が再度認められるようになった。しかし投与再開(2026年1月中旬)から半月で再び縮小し安定化した 。

    現状:3月上旬より急激な体重減少(2kg未満)が始まり、血糖値の乱高下など体調が不安定化。インスリン量を調整しつつ、フアイア糖鎖TPG-1と心疾患薬を継続していた。腫瘤は平坦なまま維持されており、自宅での強制給餌が困難になるが、院内では摂食可能であった。
    3月末に 血糖値511mg/dL。高血糖と脱水に対し、皮下輸液とインスリン投与を実施。その翌日に昼前、自宅にて呼吸状態が悪化。その約2時間後、家族に見守られながら安らかに永眠された。

    考察

    本症例は、高齢、糖尿病、心疾患という三重の合併症により標準的な外科介入が断念された症例に対し、フアイア糖鎖TPG-1がQOL向上に示唆した一例である 。またフアイア糖鎖TPG-1の効果については、日頃の診療症例で感じられており、その所感から本症例の状態を鑑みて1倍量から始めるのではなく、より多い量でスタートしている。結果として、4倍量で開始したことも本病態の改善に寄与した可能性がある一例である。

    特筆すべきは、投与の中断・再開に伴い腫瘤の増大と縮小が明確に観察された点、そして化膿・出血による不快臭の解消である 。臭いが消失している事から緩やかに生活を営むことができるようになったことで、終末期において飼い主様の負担も大きく減らすことができたのではないかと示唆される。

    本来的にはもっと早い時期にお別れが来ていたかもしれません。しかし、本製剤の導入によって得られた「腫瘤が落ち着いている穏やかな時間」こそが、飼い主様にとって愛犬との日々を噛み締め、後悔のないお別れをするための大切な「心の準備期間」になったのではないかと感じています 。

    臨床現場において本症例は、「積極的治療ができない=手立てがない」という従来の選択肢に対し、副作用を懸念することなく導入できる「第三の道」があると示唆されます。