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【症例】難治性sITPのトイ・プードル

症例提供:東京都内 動物病院(獣医師)

難治性sITPに対し、レフルノミドと糖鎖製剤(TPG-1)の併用により寛解導入・維持に成功し、ステロイドの完全休薬を達成したトイ・プードルの一例

 

糖鎖製剤(TPG-1)使用概要

投与量

投与期間

1倍量

112日

2倍量

77日

3倍量

146日

※2倍量までは間欠的投与であったとのこと。
※犬猫用フアイア製品として

症例基本情報

  • 品種: トイ・プードル
  • 性別: 避妊雌
  • 生年月日: 2014年10月27日(初診時9歳)
  • 初診日: 2024年9月15日
  • 主訴: トリミング時に紫斑を指摘され来院。
  • 診断: 二次性免疫介在性血小板減少症(Secondary ITP)

症例概要

    【来院経緯と臨床徴候】

    トリミング時に紫斑を指摘されたことを主訴に来院。来院時の身体検査では意識清明であったものの、背部から腹部にかけての紫斑に加え、歯への黒色の血液付着やメレナ(黒色便)といった出血徴候が確認された。
    ▼超音波検査時の紫斑所見

    2604_エビデンスメルマガ_ITP_02

    左:腹部超音波検査前 右:腹部超音波検査後

    【検査所見と診断プロセス】

    初診時の血液検査において、血小板数(PLT)は 0 /μL (測定限界以下)(RI: 14.8–48.4 × 10⁴/μL)という顕著な血小板減少を示した。一方で赤血球や白血球数に著変は認められなかった。(Hb 16.7 g/dL、WBC 10,730 /μL)胸部・腹部レントゲンおよび腹部超音波検査、感染症検査(ベクターパネル陰性)等を実施し、出血の原因となる明らかな腫瘍性疾患や感染症等の基礎疾患は除外された。

    本症例は初診日の約3週間前(2024年8月24日)に6種混合ワクチンを接種していたため、これらの臨床所見および背景から「二次性免疫介在性血小板減少症(sITP)」と診断し、直ちに治療を開始した。

    治療経過・併用戦略

    本症例は、初期治療には反応したもののステロイド減薬中に血小板数が急減する「再発」を繰り返し、複数の免疫抑制剤の変更・追加を要した難治症例であった。

    Phase 1: 初期寛解導入(Day 1〜Day 100)

    • 治療:
      • ビンクリスチン(VCR): 初日に静脈内投与。
      • ステロイド(PSL): 1.9 mg/kg SIDから開始。
      • シクロスポリン(CsA): 8.5 mg/kg SID併用。
    • 経過:
      • Day 8にはPLT 57.8万/μLまで回復し、初期反応は良好であった。
      • その後、PLT 25万〜40万/μLで安定し、PSLの漸減を開始した。

    Phase 2: 維持療法とフアイア糖鎖TPG-1の導入(Day 110〜)

    • Day 110:
      • 長期管理を見据え、免疫調整を目的にフアイア糖鎖TPG-1を1倍量で開始した。
      • この時期、PLT 30万/μL前後で安定していた。

    Phase 3: 再発と多剤併用戦略(Day 222〜)

    • 経過:
      • Day 194頃よりPLTが低下傾向(26.3万/μL)、Day 222には9.6万/μL、Day 250には1.1万/μLまで減少し、再発と判断した。
    • レスキュー治療:
      • フアイア糖鎖TPG-1増量: 免疫調整能を強化するため、 2倍量へ増量。その後、さらに 3倍量へ増量。
      • 薬剤変更: シクロスポリンを10mg/headまで減量していたものを再度元の薬用量へ戻したものの奏効せず、
        ミコフェノール酸モフェチル(10mg/kg BID)に変更するも無反応であったため、レフルノミド(7.5mg/head)で反応が認められた。
      • ステロイド増量: 一時的にPSLを再増量(2.2 mg/kg)。

    Phase 4: 再寛解と安定化(Day 320〜現在)

    • 現在:
      • Day 320にはPLT 10.7万/μLまで回復したためステロイドの減量を実施。

    Day 445(2025.12.14)時点では PLT 24.3万/μL と正常値を維持しており、免疫抑制剤ステロイドの最小限の投与でコントロールできている。

    臨床経過・データ推移

    経過日数

    日付

    体重 (kg)

    PLT (×10^4/μL)

    プレドニゾロン

    投与

    備考

    Day 1

    24.09.15

    3.16

    0

    1.9mg/kg SID

    重度の血小板減少症により免疫抑制治療開始

    Day 8

    24.09.22

    -

    57.8

    1.9mg/kg SID

    PLTの回復が認められた。

    Day 110

    25.01.12

    -

    31.1

    STOP

    フアイア糖鎖TPG-1 開始(1倍量で開始)

    Day 166

    25.03.09

    -

    44.3

    STOP

    シクロスポリン減量、臨床状態良好。

    Day 250

    25.06.01

    -

    1.1

    STOP

    再発が認められる。シクロスポリンを当初の量へ変更

    Day 278

    25.06.29

    3.1

    0

    1.2mg/kg SID

    シクロスポリンから、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)へ変更。

    Day 285

    25.07.06

    2.8

    1.2

    2.2mg/kgへ増量

    コントロール不良。ステロイドを高用量へ変更し、
    MMFを漸減、フアイア糖鎖TPG-1を3倍量へ変更

    Day 299

    25.07.20

    3.18

    0.6

    継続

    MMFからレフルノミド(7.5mg/head SID)へ変更。

    Day 320

    25.08.10

    -

    10.7

    1日休み、3日間POへ変更

    血小板回復傾向

    Day 445

    25.12.14

    3.16

    24.3

    STOP

    ステロイド休薬、レフルノミド、フアイア糖鎖TPG-1のみで維持開始

    Day 488

    26.01.25

    2.98

    27

    -

    維持中

    Day 530

    26.03.08

    2.9

    30.2

    -

    維持中(スケーリング処置実施)

     

    【推移グラフ】

    2604_エビデンスメルマガ_ITP_03

    考察

    本症例は、プレドニゾロンおよびシクロスポリンの減量に伴って再発を認めた難治性sITPであった。再発期(Day 222以降)には、シクロスポリンの増量やミコフェノール酸モフェチルへの変更を行ったものの、十分な反応は得られず、多剤抵抗性を示す病態であった。その後、免疫抑制薬をレフルノミドへ変更したところ、完全寛解(CR; Plt >100,000/μl)に至った。

    本症例では、レフルノミドへの変更と同時に、投与状況(コンプライアンス)の見直しを行うとともに、フアイア糖鎖TPG-1を3倍量へ増量したため、フアイア単独の効果を明確に評価することはできなかった。しかし、血小板数の推移は、ITPで一般的にみられる治療反応、すなわち血小板数が急速に増加した後に横ばいあるいは漸減する経過とは異なっていた。さらに、Day 362に一過性の血小板数減少がみられた後、再び緩やかな増加傾向を示したことから、フアイア糖鎖TPG-1の効果が遅発的に発現した可能性が示唆された。また、経過中にプレドニゾロンの休薬を達成し、その後レフルノミドを減量した後も、血小板数は最終観察日まで増加を維持した。

    以上より、本症例では、難治性sITPからCRへの移行にはレフルノミドの導入が寄与した可能性が高く、その後のCR維持にはフアイア糖鎖TPG-1が関与した可能性があると考えられた。