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【症例】犬の免疫介在性好中球減少症

症例提供:久末正晴教授(麻布大学内科学研究室)

免疫介在性好中球減少症の犬における糖鎖製剤(TPG-1)の併用治療

 

症例情報

 症例は、4 歳齢・体重7.5kg のフレンチブルドッグです。
以前よりかかりつけ病院にて、免疫介在性好中球減少症と診断され、プレドニゾロンおよびシクロスポリンによる免疫抑制療法が継続されていましたが、十分な治療効果は認められませんでした。
 初診時、抗がん剤などの投薬歴はないにもかかわらず、末梢血好中球数は160/μL と著明に低下しており、C 反応性タンパク(CRP)値は20 mg/dL と高値を示していました。
骨髄検査では、骨髄球系および赤芽球系細胞の過形成を認めたものの、分葉核好中球の出現は乏しく、好中球は桿状核の段階で成熟が停止し、その後速やかに破壊されている病態が示唆されました。

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治療背景と課題

 免疫介在性好中球減少症においては、一般的に免疫抑制療法にある程度の反応が期待されますが、効果が得られない場合には長期にわたって免疫抑制剤の継続投与が必要となり、重篤な日和見感染を誘発するリスクを伴います。本症例も抗菌薬や顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)の投与
を含めた支持療法を行いましたが、好中球数の改善は得られず、管理は困難を極めました。
 近年発表された海外の報告(免疫介在性好中球減少の犬35 例)では、全例でプレドニゾロンへの初期反応が見られた一方、10例で再発が報告されています。このことからも、再発リスクを常に念頭に置いた治療戦略が求められる疾患といえます。
 臨床現場では、必要最小限のプレドニゾロンに加え、シクロスポリン、ミコフェノール酸モフェチル、ルフルノミドなどを併用することがありますが、全身性エリテマトーデス(SLE)を併発した場合には急激な悪化や死亡例も経験されます。
病理解剖で胸腔内に膿性貯留を認めた症例もあり、非常に慎重な管理が求められる疾患です。

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治療経過と糖鎖TPG-1の導入

 本症例では初診時、CRP 値が20 と高値であったものの、明らかな原発病巣は同定されず、敗血症様の全身状態が認められました。ミノサイクリン(ミノマイシン)を1 回投与後、免疫調節作用を期待して糖鎖TPG-1 の投与を開始しました。
 投与後まもなく好中球数が160→1000/μL と急速に上昇し、その後一時的に200/μL まで減少したものの、以後徐々に回復傾向を示し、30→35/μLと漸増しました。これに伴い、
プレドニゾロンの漸減を慎重に進め、約1 年の期間をかけて1 日おきの投与にまで減量、その後370 病日前後に完全休薬へと移行することができました。
 以降は、糖鎖TPG-1 単独で良好な好中球数を維持し、再発なく経過しています。

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予後と現況

 治療終了から約2 年後、かかりつけ病院でワクチン接種を行った際の血液検査において、好中球数は4170/μL と正常範囲内を維持しており、安定した状態が続いています。
 糖鎖TPG-1 の使用により、従来の免疫抑制治療ではコントロール困難であった症例においても、治療のブレイクスルーが得られたと感じております。飼い主からも「現在は非常に元気に過ごしており、治療を終えられたことに感謝している」とのお言葉をいただき、治療終了時には記念撮影を
するほど喜ばれておりました。

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まとめ

 本症例は、免疫抑制療法単独では反応が乏しかった免疫介在性好中球減少症に対して、糖鎖TPG-1 を併用したことで、好中球数の持続的な改善と免疫抑制薬の離脱が可能となった一例です。再発率が高く管理が困難な本疾患において、糖鎖TPG-1 は今後の新たな治療選択肢として、さらなる検討に値すると考えます。