【症例】免疫介在性血小板減少症(IMT)の高齢犬
症例提供:久末 正晴教授(麻布大学附属動物病院)
免疫介在性血小板減少症(IMT)の再発に対し、フアイア糖鎖TPG-1を併用することで血小板数の安定維持とステロイドの減薬を達成した高齢犬の一例

症例基本情報
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- 品種: ミックス犬
- 性別: 避妊雌
- 年齢: 11歳
- 体重: 17kg(BCS 4/5)
- 既往歴: 2020年11月に血小板減少(10万/μL)を主訴に来院、無治療で経過観察していた。
症例概要
【診断プロセス】
2021年10月、重度の血小板減少(2.3万/μL)が認められ、免疫介在性血小板減少症(IMT)の再発と診断された。血液検査では、PLT 1.2万/μL(再来時)、抗血小板抗体 94.9%(正常値 <27%)と極めて高い値を示し、免疫介在性の破壊機序が強く疑われた。他の血球系(WBC、RBC)やCRPに顕著な異常はなく、原発性IMTの再燃として治療介入を開始した。
【症例所見】
身体検査: 体温38.9℃、心拍数120/min、呼吸数30/min。
血液検査: PLT 1.2万/μL、RET 8.3万/μL、CRP 0 mg/dL。
免疫検査: 抗血小板抗体(IgG) 94.9%。
治療経過・併用戦略
治療目標を「血小板数の安全圏での維持」および「高齢であることを考慮した副作用の最小化(ステロイド漸減)」に設定された。
【治療プロトコル】
- 寛解導入期: プレドニゾロン 1.2 mg/kg より開始。
- 維持・減量戦略: ステロイド単独での長期管理に伴う医原性クッシング等の副作用を回避するため、免疫調節作用を期待してフアイア糖鎖TPG-1を導入。
- 減薬スケジュール:
- 血小板数の安定を確認しながら、プレドニゾロンを1.2 mg/kg → 0.74 mg/kg → 0.58 mg/kg → 0.45 mg/kgへと段階的に漸減。
- フアイア糖鎖TPG-1はステロイド開始後40日付近にて併用開始。
臨床経過・データ推移
【血液学的評価】
- 血小板数(PLT): プレドニゾロン投与開始後、血小板数は速やかに10万/μL以上の安全圏へ復帰し、ステロイドを0.45 mg/kgまで減量しても再発傾向は認められていない。
- 抗血小板抗体: 94.9%から、71.8% → 50.6% → 55.5%へと低下が確認された。
【身体的評価・QOL】
- 高齢犬(11歳)において懸念されるステロイド高用量投与による代謝への影響を、減薬によって最小限に抑えることができた。
- 有害事象は本症例では認められず、良好なコンディションを維持している。
【主要な経過データ抜粋】

考察
本症例は、IMTの「寛解維持期におけるステロイド節約(Steroid-sparing)」としてのフアイア糖鎖TPG-1の有用性を示唆している。一次診療においてIMTは緊急性が高い場合があり導入期には高用量での免疫抑制治療が必要となるが、高齢犬や長期管理例ではステロイドによる副作用(多飲多尿、肝酵素上昇、筋力低下)がQOLを阻害する。本剤は「免疫を叩く」のではなく「Th1/Th2バランスを整える」調節薬として捉えるべきであり、標準治療の「引き算(減薬)」を可能にするための選択肢として、早い段階から導入の検討の可能性がある。