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【症例】難治性免疫介在性溶血性貧血(IMHA)の猫

症例提供:久末 正晴教授(麻布大学附属動物病院)

難治性猫免疫介在性溶血性貧血(IMHA)に対し、フアイア糖鎖TPG-1の導入により多剤併用療法からの完全離脱を達成した一例

 

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症例基本情報

  • 品種: 猫(ミックス)
  • 性別: 去勢雄
  • 年齢: 3歳(初診時)
  • 体重: 4.6kg(BCS 3/5)
  • 主訴: 長期間のステロイド利用による皮膚の脆弱化、病態のコントロール

症例概要

    【診断プロセス】

    2021年2月、重度の貧血(PCV 14%)が認められステロイドによる治療の開始。その後、2021年2月28日にPCV28%まで回復したが、翌月3月に肺炎が認められ貧血が進行。同年5月に貧血の再発が認められ、プレドニゾロン、シクロスポリンにて治療をしても反応がなく、幹細胞の投与も実施。免疫抑制剤をシクロスポリンからミコフェノールに変更して経過を観察していた症例であった。

    受診時の血液検査と細胞診にてマクロファージによる赤芽球貪食像が確認されたことや今までの病態から、免疫介在性溶血性貧血(IMHA)と診断された。

    【難治性の経過】

    • 初期治療: 高用量プレドニゾロンにて一時改善するも、肺炎併発および貧血の再発を繰り返す。
    • 多剤併用・再生医療: プレドニゾロン、シクロスポリン、脂肪由来幹細胞(ADSC)投与、レフルノミドへの変更など、標準治療を行いながらも安定せず。
    • 深刻な副作用: プレドニゾロンの副作用により肩から背部の皮膚が裂孔する皮膚の脆弱化が発生。また、レフルノミドによる肝酵素(ALT)の上昇も認められた。
    • 外科的介入: 2022年1月、脾臓摘出を実施するも、PCVは20%台後半で停滞していた。

    治療経過・併用戦略

    既存の免疫抑制剤による副作用(皮膚裂孔、肝毒性)が認められていたため、免疫調節作用を期待してフアイア糖鎖TPG-1を導入した。

    【治療プロトコル】

    1. 導入: 2022年7月よりTPG-1を開始。
    2. 減薬スケジュール:
      • プレドニゾロン: 0.3 mg/kg SID → 0.3 mg/kg EOD → 休薬
      • レフルノミド: 1.45mg/kg SID → EOD → 休薬
    3. 結果: フアイア糖鎖TPG-1単独管理移行後もPCVは維持できており貧血の再発は認められていない。

    臨床経過・データ推移

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    考察

    本症例は、猫のIMHAにおいて既存治療の限界を突破する可能性を示しています。日本の一般的な動物病院において、ステロイドの副作用(皮膚脆弱化も含む)や肝毒性によりこれ以上薬を増やせないが、減らすと再燃するという診療におけるジレンマに陥った際、フアイア糖鎖TPG-1が一つの選択肢として考えられる示唆になります。