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【症例】犬の扁平上皮癌

症例提供:久末正晴教授(麻布大学内科学研究室)

犬の扁平上皮癌に対する、糖鎖製剤(TPG-1)の治療効果

 

症例情報

 犬のトイプードル10 歳、避妊雌で、既往として免疫介在性多発性関節炎および免疫介在性血小板減少症(IMTP)を有し、治療にはプレドニゾロンおよびミコフェノール酸モフェチルを併用して管理。両疾患は良好にコントロールされ、血液検査においても血小板数は48 万/μL と正常範囲を維持しており、完全寛解が得られていた。

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検査および診断

 「口臭が強くなった」との主訴で再診、歯周病の疑いからかかりつけ動物病院にてスケーリング処置を実施した際、舌根部に腫瘤が認められた。腫瘤は部分切除され、病理組織学的検査により扁平上皮癌(SCC)と診断された。
 腫瘍軟部外科での評価では、舌の硬化を触診にて確認。
 画像検査およびリンパ節の細胞診の結果、下顎リンパ節および内側咽頭後リンパ節の腫大は認められず、転移所見も認められなかった。ただし、局所再発や血管浸潤の可能性が完全に否定されたわけではなく、外科的な完全切除および放射線治療の併用が最も推奨される治療方針として提示した。

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治療経過

 飼い主の意向により積極的治療は選択しなかった。高齢であることや精神的・身体的負担を懸念し、生活の質(QOL)を保ちつつ、可能な範囲での対症療法を希望したので、従来疾患に対する免疫調整効果が報告されている糖鎖TPG-1 を用いた補助的治療を提案し、全身状態の維持を目的として導入した。
 導入当初は予後に関して慎重な見通しを持っていたが、予想に反し、糖鎖TPG-1 投与後も腫瘍は進行を示さず、腫瘤のサイズに大きな変化は認められなかった。
 投与から半年以上が経過しても、遠隔転移や急速な局所進行は認められず、全身状態は安定し、経口摂取も良好に維持された。
 当該期間中、腫瘍の明らかな進行所見がなかったことから、治療の継続を飼い主に提案したが、途中で任意に投与を中止。最終的に566 日目にて、IMTP の再燃によると考えられる脳内出血を起因として死亡した。

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考察

 舌根部扁平上皮癌の無治療群における中央値生存期間は120~216 日とされており、1 年生存率は25%未満と報告されている。その中で本症例が約1 年半(566 日)にわたり安定した状態を維持できたことは注目に値する。
 放射線治療やブレオマイシン等の抗腫瘍薬を用いた集学的治療が可能な場合は、より長期的な生存が期待されるものの、侵襲的治療を選択できないケースや、経済的・心理的理由から積極的治療が困難な症例において、糖鎖TPG-1 のような免疫調整を目的とした補助療法が、一定の腫瘍コントロールおよびQOL 維持に寄与しうる可能性があると考えられる。

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