【症例】難治性免疫介在性血球減少症の犬および猫に対するフアイア糖鎖TPG-1の併用効果について
演題:難治性免疫介在性血球減少症の犬10例および猫5例に対するフアイア糖鎖TPG-1の併用効果とステロイド減量効果の検討
第44回動物臨床医学会年次大会にて発表
麻布大学 獣医学部 小動物内科学研究室 久末正晴教授
【緒言】
獣医療における免疫介在性血球減少症(IMHA, IMT, IMN等)の治療には、一般的にプレドニゾロン(PSL)を中心とした免疫抑制療法が用いられる。しかし、副作用によるQOLの低下や、既存薬に抵抗性を示す難治例の管理が課題となっている。本報告では、抗腫瘍作用や免疫調節作用が注目されている「フアイア糖鎖TPG-1」を、従来の治療に抵抗性を示す犬猫の免疫介在性血球減少症に対し併用投与し、その臨床的有効性および安全性を評価した。
【対象及び方法】
- 対象動物: 従来の免疫抑制療法でコントロールが困難、あるいは副作用により減薬が必要となった犬10症例、猫5症例(計15症例)。
- 疾患内訳: 免疫介在性血小板減少症(IMT)6例、免疫介在性溶血性貧血(IMHA)3例、免疫介在性好中球減少症(IMN)3例、免疫介在性汎血球減少症(IMPC)1例、エバンス症候群から再生不良性貧血(AA)への移行例1例、前駆細胞指向性免疫介在性貧血(PIMA)1例。
- 評価項目: 血球減少の改善状況、PSLおよび他の免疫抑制剤の減薬可否、および有害事象の有無。

【結果】
フアイア糖鎖TPG-1の併用により、全15症例中8例(53.3%)で血球減少の改善が認められた。
1.ステロイド減量効果
全15症例中10例(66.7%)でPSLの減量が可能であった。特筆すべき点として、2例(13.3%)においてPSLおよび併用免疫抑制剤の休薬(寛解維持)に成功した。

2.疾患別反応率
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疾患名 |
症例数 |
血球減少の改善 |
PSL減量成功 |
備考 |
|
IMT |
6 |
3例 (50.0%) |
3例 (50.0%) |
無効3例中2例は秋田犬(先天性疑い) |
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IMN |
3 |
2例 (66.7%) |
3例 (100%) |
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IMHA |
3 |
2例 (66.7%) |
2例 (66.7%) |
|
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IMPC |
1 |
1例 (100%) |
1例 (100%) |
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AA/PIMA |
2 |
0例 (0.0%) |
0例 (0.0%) |
猫の難治例 |

3.安全性
15症例中1例(犬)において投与直後に軽度の軟便が認められたが、一過性であった。その他の症例では身体検査および血液検査において臨床上問題となる有害事象は認められず、試験期間中の死亡例も確認されなかった。
【考察】
本検討において、フアイア糖鎖TPG-1の併用は、難治性の免疫介在性血球減少症に対して50%以上の症例で臨床症状の改善に寄与し、約3分の2の症例でステロイドの減量を可能にした。 IMTにおいて無効であった秋田犬の2症例については、犬種特異的な先天性血小板減少症であった可能性が示唆され、免疫介在性疾患に対する本剤の特異的な作用機序を裏付けるものと考えられる。
フアイア糖鎖TPG-1は効果発現までに1〜3ヶ月を要する特性があるため、急性期のレスキュー治療よりも、慢性期・維持期における再発防止、およびステロイド・免疫抑制剤を利用した長期管理において有用な選択肢となり得ることが示唆された。特に好中球減少時など、二次感染のリスクから既存の免疫抑制剤が増量できない局面においても、併用できる点は大きな臨床的メリットである。
【結論】
フアイア糖鎖TPG-1は、犬および猫の免疫介在性血球減少症においてステロイド依存性からの脱却やQOL維持に寄与する選択肢の一つになる可能性がある。

