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【論文】甲状腺乳頭癌に対するフアイア水抽出物のERK/HSP27シグナル抑制による抗腫瘍効果

フアイア水抽出物はERK/HSP27/STAT3/AKT経路を抑制し、甲状腺乳頭癌の増殖と浸潤を有意に阻害する。

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対象論文

 

項目

内容

和訳タイトル

甲状腺乳頭癌に対するフアイア水抽出物のin vivoおよびin vitroにおける薬力学

英題

Pharmacodynamics of huaier aqueous extract against papillary thyroid carcinoma in vivo and in vitro

発表年

2025年

筆頭著者

Fa-Zhan Xu

責任著者

Jian-Feng Sang

掲載誌

Integrative Cancer Therapies(がんの補完代替医療や統合腫瘍学に特化した査読付きの国際的学術誌であり、エビデンスに基づく統合医療分野において高い信頼性を有する)

DOI

https://doi.org/10.1177/15347354251339073

 

研究の信頼性チェック(PICO)

     

    項目

    内容

    P (Patient/Problem)

    【In vitro】ヒト甲状腺乳頭癌細胞株であるTPC-1細胞。
    【In vivo】TPC-1細胞を皮下移植した4〜5週齢の雄性BALB/cヌードマウス(体重17±1g)の異種移植モデル。

    I (Intervention)

    【In vitro】フアイア水抽出物の段階的濃度処理(0.10〜12.50 mg/ml、アポトーシスや遊走実験では1.56および6.25 mg/mlを使用)。
    【In vivo】フアイア水抽出物の経口胃内投与(低用量群:4 g/kg/日、高用量群:8 g/kg/日、21日間連続投与)。

    C (Comparison)

    【In vitro】フアイア未処理のコントロール群(0 mg/ml、DMEM培地のみ)。
    【In vivo】生理食塩水を胃内投与したコントロール群。

    O (Outcome)

    主要評価項目:CCK-8アッセイによる細胞生存率とIC50の算出、トリパンブルー染色による細胞形態変化、フローサイトメトリーによる細胞周期およびアポトーシス率、傷修復アッセイおよびTranswellアッセイによる細胞遊走・浸潤能、Western Blot法による関連タンパク質(ERK1/2, P38 MAPK, HSP27, STAT3, AKT)の発現量、in vivoにおける腫瘍体積・重量および腫瘍細胞密度の病理組織学的評価。

     

    試験デザインとサンプル数

     

    項目

    内容

    研究デザイン

    in vitroにおける細胞培養実験(用量・時間依存的アッセイ)およびin vivoにおけるマウス異種移植モデルを用いた対照比較試験。

    サンプルサイズ

    in vitro:各実験は独立して3回以上実施(CCK-8アッセイは6連ウェルで実施)。
    in vivo:計24匹のBALB/cヌードマウスを各群8匹の3群(コントロール群、低用量群、高用量群)にランダムに割り付け。

    研究期間

    in vitro:細胞処理時間24時間または48時間。
    in vivo:腫瘍体積が50 mm3に達した時点から21日間の連続投与期間。

    統計解析

    GraphPad Prism 10.0ソフトウェアを使用し、測定データは平均値±標準偏差(SD)で提示。実験群とコントロール群の比較にはt-testを使用し、P<0.05を統計的有意水準と定義。

     

    結果の詳細

    【フアイア水抽出物によるTPC-1細胞の生存率抑制と形態変化】

      Fa-Zhan Xu氏ら(2025年)の研究チームがIntegrative Cancer Therapiesで発表した検証によると、CCK-8アッセイにおいてフアイア水抽出物は用量依存的にTPC-1細胞の生存を有意に抑制した。

      濃度0.10 mg/mlでの細胞生存率は84.65%であり、最高濃度12.50 mg/mlでは24.70%まで低下し、算出されたIC50は2.538 mg/mlであった。

      トリパンブルー染色による形態観察では、1.56 mg/mlおよび6.25 mg/mlの濃度において、処理時間の経過(24時間および48時間)に伴い死細胞数が増加し、細胞膜の完全性が失われることが示唆された。

       


      【細胞周期の調節およびアポトーシスの誘導効果】

      Fa-Zhan Xu氏ら(2025年)の研究チームがIntegrative Cancer Therapiesで発表した検証によると、フローサイトメトリー解析を用いてフアイア水抽出物がTPC-1細胞の細胞周期に与える影響を評価した結果、G1期の細胞割合が減少し、G2期の細胞割合が増加するG2/M期での細胞周期停止が示された。

      さらに、Annexin V-FITC/PI染色において、フアイア水抽出物の濃度上昇に伴い、初期アポトーシスおよび後期アポトーシス/壊死細胞の割合が用量依存的に有意に増加することが示された。

       

      【細胞遊走能および浸潤能の阻害作用】

      Fa-Zhan Xu氏ら(2025年)の研究チームがIntegrative Cancer Therapiesで発表した検証によると、傷修復アッセイにおいて12時間後の傷閉鎖率はコントロール群の23.0%に対し、1.56 mg/ml群で12.1%(P < 0.01)、6.25 mg/ml群で5.8%(P < 0.01)と有意に抑制された。

      24時間後の傷閉鎖率においても、コントロール群の30.7%に対し、1.56 mg/ml群で16.32%(P < 0.01)、6.25 mg/ml群で7.3%(P < 0.01)となり、遊走能の抑制が示された。

      また、Transwell浸潤アッセイにおける相対浸潤率は、コントロール群を100%とした場合、1.56 mg/ml群で46.4%(P < 0.01)、6.25 mg/ml群で24.3%(P < 0.01)へと有意に低下した。

       

      【MAPKおよびHSP27/STAT3/AKTシグナル伝達経路への影響】

      Fa-Zhan Xu氏ら(2025年)の研究チームがIntegrative Cancer Therapiesで発表した検証によると、Western Blot法を用いた解析により、フアイア水抽出物の24時間処理によってERK1/2の発現量は1.56 mg/ml群で12.10%減少(P < 0.05)、6.25 mg/ml群で26.59%減少(P < 0.01)した。

      一方で、P38 MAPKの発現量は1.56 mg/ml群で109.90%増加(P < 0.05)、6.25 mg/ml群で128.29%増加(P < 0.01)し、アポトーシス促進経路の活性化が示された。

      さらに、生存や増殖に関与するHSP27、STAT3、およびAKTの発現量は、フアイア水抽出物の濃度依存的に有意に減少(ダウンレギュレーション)した。

       

      【マウス異種移植モデルにおけるin vivo腫瘍抑制効果】

      Fa-Zhan Xu氏ら(2025年)の研究チームがIntegrative Cancer Therapiesで発表した検証によると、BALB/cヌードマウスを用いたin vivo実験において、フアイア水抽出物の経口投与が腫瘍成長を抑制することが示された。

      21日間の連続投与により、治療群(4 g/kgおよび8 g/kg)はコントロール群と比較して腫瘍の体積および重量を有意に縮小・減少させた。

      投与期間中、治療群とコントロール群の間でマウスの体重に有意な差は見られず、顕著な毒性症状は観察されなかったと報告されている。

      病理組織学的評価(HE染色)におけるROI 4 mm²内の平均腫瘍細胞密度は、コントロール群の68.3 cells/mm²に対し、4 g/kg群で56.3 cells/mm²(P < 0.05)、8 g/kg群で50.0 cells/mm²(P < 0.01)と有意に減少した。

       

      獣医療への応用可能性と専門的考察

      【臨床現場での活かし方】

      本研究はヒト甲状腺乳頭癌細胞株およびマウスモデルを用いた基礎研究であるが、フアイア水抽出物が示すマルチターゲットな抗腫瘍活性は、犬猫の腫瘍治療における補助療法として応用できる可能性を示唆している。

      特に、高齢や心腎機能低下などの合併症により、通常の外科切除や積極的な化学療法が実施できない症例において、QOLの維持を目的とした緩和ケアの選択肢として考慮される可能性がある。

      経口投与が可能で重篤な副作用が認められなかった点は、自宅での継続的なケアを希望する飼い主のニーズにも合致し、臨床現場での導入が検討される可能性がある。

       

      【既存治療との比較】

      甲状腺癌の標準治療である外科切除や、チロシンキナーゼ阻害薬(トセラニブなど)、抗がん剤(ドキソルビシンなど)と比較して、フアイア水抽出物の抗腫瘍活性はマイルドである。

      本研究でも示されている通り、フアイア水抽出物のTPC-1に対するIC50(2.538 mg/ml)は、ドキソルビシン(IC50: 0.143 mg/ml)やレンバチニブ(IC50: 0.191 mg/ml)と比較して高値である。

      したがって、本成分は単独で腫瘍縮小を狙うものではなく、既存の標準治療と併用することで、薬剤耐性の獲得を抑制し、標準治療薬の投与量を減量して副作用を軽減するためのアジュバント療法として位置づけるのが現実的と考えられる。

       

      【研究の限界(Limitation)と批判的吟味】

      本研究の限界として、第一にin vivoにおける検証が原発巣の腫瘍増殖抑制に留まっており、遠隔転移や浸潤に対する抑制効果が生体内で直接評価されていない点が挙げられる。

      第二に、犬の甲状腺腫瘍の約90%は極めて悪性度の高い濾胞状腺癌や未分化癌であり、ヒトの予後良好な乳頭癌(PTC)とは生物学的挙動や病理組織型が大きく異なるため、本結果を犬の臨床にそのまま外挿することはできない。

      第三に、マウス実験で用いられた投与量(4 g/kgおよび8 g/kg)は極めて高用量であり、これを犬猫の臨床用量に換算した場合、現実的な投与設計や消化器耐容性の面で課題が生じるため、さらなる臨床試験による用量設定が必要と考えられる。

       

      読者のためのミニ用語集

      • フアイア:古くから中国で利用されてきた薬用茸(Trametes robiniophila Murr)であり、プロテオグリカンを主成分とし、様々な悪性腫瘍に対して抗腫瘍活性や免疫調節作用を示す生理活性成分と考えられている。
      • 甲状腺乳頭癌(PTC):ヒトの甲状腺悪性腫瘍の中で最も頻度の高い病理組織型であり、一般に予後は良好であるが、一部で侵襲性の高い挙動や遠隔転移を示すことがある。犬の甲状腺癌(主に濾胞状腺癌)とは生物学的挙動が異なる。
      • ERK/HSP27/STAT3/AKT経路:細胞の生存、増殖、遊走、およびアポトーシス抵抗性に関与する重要な細胞内シグナル伝達経路であり、腫瘍の悪性化や治療抵抗性に深く寄与していると考えられている。
      • IC50:半数生存阻害濃度(Half Maximal Inhibitory Concentration)を指し、特定の細胞の増殖や活性を50%阻害するために必要な薬物濃度を表す指標である。値が小さいほど、その薬物の活性が強いことを意味する。

       

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      本資料は動物医療関係者向けの学術的参考情報です。一般飼い主向け広告ではなく、特定の疾病に対する診断、治療、予防または効果を保証するものではありません。本品は動物用医薬品として承認されたものではありません。無断転載・転送・一般飼い主への配布を禁じます。