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【論文】乳がんに対するフアイア多糖類のAKT/mTOR抑制とSnail分解を介した増殖転移抑制効果

乳がんにおけるフアイア多糖類の多面的な抗腫瘍機序と臨床における生存期間延長効果を検証する。

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対象論文

Ke-Fei Luoら(2024年)の研究チームがFrontiers in Pharmacologyで発表した検証によると、フアイアは乳がん治療において多面的な分子機序を介して抗腫瘍効果を発揮することが示されている。

項目

内容

和訳タイトル

乳がん治療におけるフアイアの分子機構と治療応用

英題

Molecular mechanisms and therapeutic applications of huaier in breast cancer treatment

発表年

2024年

筆頭著者

Ke-Fei Luo

責任著者

Ming-Hao Wang

発表学術誌

Frontiers in Pharmacology

DOI

https://doi.org/10.3389/fphar.2023.1269096

 

研究の信頼性チェック(PICO)

     

    項目

    内容

    P (Patient/Problem)

    ヒト乳がん細胞株(MCF-7, MDA-MB-231, SUM-159等)、乳がん担がんマウスモデル、およびヒト乳がん患者

    I (Intervention)

    フアイア抽出物(Huaier)またはフアイア多糖類(PS-T)の単独投与、あるいは既存治療(化学療法等)との併用投与

    C (Comparison)

    未治療コントロール群、プラセボ投与群、または化学療法等の既存治療単独群

    O (Outcome)

    細胞増殖抑制、アポトーシス・自食作用・鉄死の誘導、上皮間葉移行の抑制、血管新生阻害、免疫調節、および生存期間の延長
     

    試験デザインとサンプル数

     

    項目

    内容

    研究デザイン

    系統的レビュー(in vitroおよびin vivoの基礎研究データ、ならびにヒト臨床試験データの統合的解析)

    サンプルサイズ

    基礎研究における各種細胞株およびマウスモデル、臨床試験における乳がん患者計669例(主要4試験の合計)などの複数データ

    研究期間

    2024年発表時点までに公開された主要な基礎実験(24〜48時間処理等)および臨床観察期間(6〜18ヶ月等)

    統計解析

    各個別研究におけるt検定、ANOVA、カプランマイヤー法等による生存解析(有意水準はP < 0.05またはP < 0.01)

     

    結果の詳細

    【フアイア抽出物(Huaier)による乳がん細胞の増殖抑制と細胞周期停止】

    Panら(2020年)の研究チームが発表した検証によると、トリプルネガティブ乳がん細胞に対してフアイア抽出物(Huaier)を2 mg/mL、4 mg/mL、8 mg/mL、16 mg/mLの濃度で24時間および48時間処理した結果、用量および時間依存的な増殖抑制効果が確認された。

    また、Qiら(2016年)の研究チームが発表した検証によると、フアイア抽出物(Huaier)とタモキシフェンの併用は、Akt/mTORシグナル伝達経路を介して自食作用を増強し、MCF-7およびT47D細胞をG0/G1期に停止させることがフローサイトメトリー解析により示されている。

    さらに、Zhangら(2010年)の研究チームが発表した検証によると、8 mg/mLの濃度においてMCF-7およびMDA-MB-231細胞の生存率が低下し、p53およびリン酸化p53の蓄積と活性化が誘導されることがウエスタンブロッティングにより明らかになった。

    【Snail分解を介した上皮間葉移行の抑制と遠隔転移阻害】

    Tianら(2021年)の研究チームが発表した検証によると、乳がん肺転移マウスモデルにおいて、フアイア抽出物(Huaier)を25 μg/gおよび100 μg/gの用量で21日間隔日経口投与したところ、肺における転移結節のサイズと数が用量依存的に減少した。

    このメカニズムとして、フアイア抽出物(Huaier)がLC3依存的な自食作用を誘導することにより、上皮間葉移行を促進する転写因子であるSnailタンパク質を分解し、CDH1の発現を維持することが示されている。

    また、Zhangら(2010年)の研究チームが発表した検証におけるin vitro浸潤アッセイでは、8 mg/mLのフアイア抽出物(Huaier)処理により、マトリゲルを通過するMDA-MB-231細胞の数が対照群と比較して有意に減少することが示された。

    【がん幹細胞性の抑制と自己複製能の阻害】

    Huら(2013年)の研究チームが発表した検証によると、乳がん幹細胞性の高いSUM-159細胞に対するフアイア抽出物(Huaier)のIC50は約10 mg/mLであり、その処理濃度の上昇に伴って細胞スフェロイドの体積および形成数が有意に抑制された。

    また、Huら(2019年)の研究チームが発表した検証によると、フアイア抽出物(Huaier)はERα-36を介したAKT/GSK3β/β-catenin経路を不活性化することにより、アルデヒド脱水素酵素1陽性のがん幹細胞の濃縮を用量依存的に減少させることが示されている。

    さらに、Wangら(2014年)の研究チームが発表した検証によると、MCF-7細胞をフアイア抽出物(Huaier)で24時間処理することにより、がん幹細胞マーカーであるCD44+/CD24-細胞の割合が有意に減少することが確認された。

    【腫瘍血管新生の阻害作用】

    Wangら(2012年)の研究チームが発表した検証によると、フアイア抽出物(Huaier)は血管内皮細胞の遊走および大動脈発芽の長さと密度を用量依存的に減少させ、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)の骨格再編成を誘導することが示された。

    この作用は、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)のシグナル伝達経路であるERKの活性化を抑制することに起因しており、腫瘍組織におけるVEGFの発現を低下させることがin vivo実験でも確認されている。

    【アポトーシス、自食作用、および鉄死の誘導機序】

    Wangら(2015年)の研究チームが発表した検証によると、4 mg/mLのフアイア抽出物(Huaier)で48時間処理した乳がん細胞では、電子顕微鏡観察において高度に分解された膜構造を含む自食胞が多数認められ、mTOR/S6Kシグナル伝達の抑制が確認された。

    同研究チームの検証では、3 mg/mLのフアイア抽出物(Huaier)で48時間処理した乳がん細胞において、点状のLC3蛍光の数と強度が有意に増加することも確認されている。

    また、Liら(2020b年)の研究チームが発表した検証におけるトランスクリプトーム解析およびin vitro検証によると、フアイア抽出物(Huaier)はGPX4のダウンレギュレーションを介して活性酸素種(ROS)の蓄積をトリガーし、鉄死(フェロトーシス)を誘導することが示唆されている。

    【腫瘍免疫微小環境の調節作用】

    Liら(2015a年)の研究チームが発表した検証によると、フアイア抽出物(Huaier)は腫瘍随伴マクロファージの浸潤を抑制し、CD206陽性のM2表現型への極性化を阻害するとともに、RAW264.7細胞の貪食能を活性化させることが示された。

    また、Panら(2020年)の研究チームが発表した検証によると、4T1乳がん担がんマウスにおいて、フアイア抽出物(Huaier)投与群では腫瘍微小環境における樹状細胞の浸潤が有意に増加し、IL-1βやIL-12p70などの炎症性サイトカインの産生が促進された。

    さらに、Liら(2015a年)の研究チームが発表した検証では、担がんマウスへのフアイア抽出物(Huaier)の腹腔内投与により、末梢血中のCD4+/CD8+ T細胞比が用量依存的に上昇し、細胞性免疫機能の改善が認められている。

    【臨床試験における化学療法との併用効果および予後改善】

    Wangら(2019a年)の研究チームが発表した検証によると、進行トリプルネガティブ乳がん術後患者201例(治療群101例、対照群100例)を対象とした臨床試験において、術後化学療法にフアイア抽出物(Huaier)顆粒を併用した群は、化学療法単独群と比較して、無病生存期間(DFS)および全生存期間(OS)が有意に改善した。

    また、Zhangら(2019b年)の研究チームが発表した検証では乳がん化学療法患者284例(治療群140例、対照群144例)、Chenら(2020年)の研究チームが発表した検証では乳がんAP療法患者100例(治療群50例、対照群50例)、Liら(2022年)の研究チームが発表した検証では乳がんAP療法患者84例(治療群42例、対照群42例)を対象に、それぞれフアイア顆粒の併用効果が検証されている。

    さらに、Chenら(2004年)の研究チームが発表した検証によると、シクロホスファミド、ピラルビシン、5-FUを用いたCTF療法単独の客観的奏効率が68.8%であったのに対し、フアイア抽出物(Huaier)を併用した群では90.9%と有意に向上した。

    Daiら(2007年)の研究チームが発表した検証では、ゲムシタビンとアドリアマイシンを用いたVE療法にフアイア抽出物(Huaier)を併用することにより、末梢血中のCD4+ T細胞数およびCD4+/CD8+比、NK細胞数が有意に高値を示し、骨髄抑制による免疫低下が緩和された。

     

    獣医療への応用可能性と専門的考察

    【臨床現場での活かし方】

    本論文で示されたフアイア抽出物(Huaier)の多面的な抗腫瘍効果は、犬猫の悪性腫瘍治療、特に猫の悪性乳腺腫瘍における術後補助療法として有用な選択肢となる可能性を示唆している。

    猫の乳腺腫瘍はその90%以上が悪性乳腺癌であり、早期にリンパ節や肺へ遠隔転移を起こすという、ヒトのトリプルネガティブ乳がんに類似した生物学的挙動を示す。

    Tianら(2021年)の研究チームによって実証された、Snail分解を介した上皮間葉移行の抑制および肺転移結節の減少という知見は、外科的切除後の微小残存病変に対する遠隔転移予防策として、臨床現場での応用が期待される。

    【既存治療との比較】

    従来の単一標的指向型の化学療法剤や分子標的薬は、腫瘍細胞の代償的適応メカニズムにより早期に薬剤耐性を獲得しやすいという課題が存在する。

    これに対し、フアイア抽出物(Huaier)は、AKT/mTOR経路の阻害、p53活性化によるアポトーシス誘導、GPX4低下による鉄死誘導など、複数の抗腫瘍パスウェイを同時に刺激するマルチターゲット作用を有している。

    この特性は、単一薬剤に対する耐性をバイパスするだけでなく、パクリタキセルやドキソルビシンといった標準的化学療法剤との相乗効果を発揮し、治療強度を維持しながら副作用を軽減するサポーティブケアとしても適している。

    【研究の限界(Limitation)と批判的吟味】

    本論文で紹介されている臨床エビデンスの多くは、ヒトにおける比較的小規模な試験や、in vitroおよび実験動物モデルに基づくものであり、犬猫における直接的な臨床データは依然として不足している。

    また、フアイア抽出物(Huaier)は多糖類を主成分とする多成分系の生理活性成分であり、個々の活性成分がどの受容体に結合して効果を発揮しているのかという詳細な標的の同定は不十分である。

    さらに、猫においてはグルクロン酸抱合能の欠損という生理学的背景があるため、真菌由来の微量成分に対する代謝排泄遅延のリスクを考慮し、臨床応用時には低用量からの開始と肝腎機能のモニタリングが必要である。

     

    読者のためのミニ用語集

    • フアイア抽出物(Huaier):真菌の一種であるフアイア(Trametes robiniophila Murr)から得られる抽出物であり、多糖類(PS-T)を主成分とし、多面的な抗腫瘍活性や免疫調節作用を示す生理活性成分。
    • 上皮間葉移行(EMT):上皮系細胞が極性を失い、遊走・浸潤能の高い間葉系細胞へと表現型を変化させるプロセスであり、がんの浸潤および遠隔転移において中心的な役割を果たす。
    • 鉄死(フェロトーシス):鉄依存性の脂質過酸化物の蓄積によって引き起こされる、アポトーシスや自食作用とは異なるプログラム細胞死の一種。
    • トリプルネガティブ乳がん(TNBC):エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体、およびHER2の発現を欠く乳がんのサブタイプであり、悪性度が高く、有効な分子標的薬が少ないため予後不良とされる。
    • 腫瘍随伴マクロファージ(TAM):腫瘍微小環境に浸潤するマクロファージであり、主にプロ腫瘍活性を持つM2表現型を示し、腫瘍の増殖、血管新生、および転移を促進する。


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