コンテンツまでスキップ
  • 検索フィールドが空なので、候補はありません。

【論文】大腸がんへのフアイア抽出物のp53・PI3K経路を介した抗腫瘍作用と化学療法増強効果

フアイア抽出物はp53活性化やPI3K経路抑制を介し大腸がんの増殖阻害と化学療法感受性増強を示す。

論文(本文)はこちら

対象論文

 

項目

内容

和訳タイトル

フアイアの大腸がんに対する治療効果:ミニレビュー

英題

The treatment effects of Trametes Robiniophila Murr against colorectal cancer: A mini-review 

発表年

2022年

筆頭著者

Bo Li

責任著者

Zhuo Liu

発表学術誌

Frontiers in Medicine(Lausanne)(医学・臨床研究全般をカバーするオープンアクセスの査読付き国際学術誌であり、高い信頼性を有している)

DOI

https://doi.org/10.3389/fmed.2022.981516


研究の信頼性チェック(PICO)

 

項目

内容

P (Patient/Problem)

ヒトの大腸がん(CRC)細胞株(HT-29、HCT116など)、および大腸がん担がんマウスモデル(ヌードマウス、大腸炎関連大腸がん[CAC]モデルマウスなど)

I (Intervention)

フアイア抽出物、フアイア顆粒、またはフアイア多糖類(TP-1など)の単独投与、または化学療法剤(シスプラチン、パクリタキセル、5-フルオロウラシル、オキサリプラチンなど)との併用投与

C (Comparison)

未治療コントロール群(無処置、または溶媒投与群)、または化学療法剤単独投与群

O (Outcome)

腫瘍細胞の増殖抑制、G0/G1期およびS期での細胞周期停止、アポトーシス誘導、上皮間葉転換(EMT)の抑制、がん幹細胞(CSC)の増殖・分化抑制、腫瘍組織内の微小血管密度(MVD)の低下、免疫系の強化(マクロファージ貪食能、NK細胞活性、樹状細胞成熟、Th1分化促進)、化学療法感受性の増強および毒性軽減

 

試験デザインとサンプル数

 

項目

内容

研究デザイン

過去のin vitro(細胞実験)およびin vivo(マウス・ヌードマウスを用いた担がんモデル実験)、臨床メタアナリシスの知見を統合・分析したミニレビュー

サンプルサイズ

レビュー論文のため直接の被験体数はなし(引用文献として、HT-29移植ヌードマウスモデルや大腸炎関連大腸がんマウスモデル、乳がん担がんマウスモデルなどの個別研究を網羅)

研究期間

レビュー対象となった各研究の実験期間(細胞処理時間、動物モデルの維持期間など)に準ずる

統計解析

引用された各個別研究における検定手法(ANOVA、t検定など)および統計的有意水準(P<0.05またはP<0.01)の定義に準ずる

 

結果の詳細

【腫瘍細胞の増殖抑制とアポトーシス誘導効果】

Liら(2022年)の研究チームがFrontiers in Medicineで発表した検証によると、フアイア抽出物は大腸がん細胞の細胞周期をG0/G1期およびS期で停止させ、増殖能力を減弱させることが示されている。この作用は、野生型p53タンパク質の発現上昇および抗アポトーシスタンパク質であるBcl-2のダウンレギュレーション(Bcl-2/Bax比の低下)を介したミトコンドリア経路の活性化によるものと考えられている。

また、Sunら(2017年)の研究チームによる検証では、HT-29大腸がん細胞株を移植したヌードマウスにおいて、フアイア顆粒の投与がPI3KR1、Akt、Wnt1、CTTNB1、Notchなどの遺伝子発現を減少させ、腫瘍の発育を抑制したことが示されている。

【上皮間葉転換(EMT)の抑制による浸潤・転移の阻害】

同検証によると、フアイア抽出物は腫瘍の浸潤や遠隔転移に深く関与する上皮間葉転換(EMT)を抑制する可能性が示されている。具体的には、胃がん細胞株(MKN-45)において、細胞外マトリックスの分解に関与するマトリックスメタロプロテアーゼであるMMP-2およびMMP-9の発現、ならびにBcl-2の発現を減少させることが報告されている。

さらに、膵臓がん細胞を用いた研究においては、Wnt/β-cateninシグナル伝達経路を抑制することにより、細胞の浸潤、遊走、およびEMTプロセスを阻害することが確認されている。

【大腸がん幹細胞(CSC)の自己複製能および分化能の減弱】

同検証によると、腫瘍の再発や転移の主因となるがん幹細胞(CSC)に対するフアイア抽出物の抑制効果が明らかになっている。

Sunら(2017年)の研究チームによる検証によると、フアイア顆粒で処理された大腸がん幹細胞において、腫瘍の増殖に関連するメッセンジャーRNA(mRNA)の発現が有意に低下し、幹細胞の自己複製能が抑制されることが示されている。これにより、がん幹細胞からがん細胞への分化や増殖のプロセスが阻害され、腫瘍の再発防止に寄与する可能性が示唆されている。

【腫瘍組織における血管新生の阻害作用】

同検証によると、フアイア抽出物は腫瘍の成長と転移に不可欠な血管新生を阻害する作用を有している。

Zhengら(2014年)の研究チームによる検証では、肝細胞がんモデルマウスにおいて、フアイア多糖類(TP-1)が低酸素誘導因子1α(HIF-1α)および血管内皮増殖因子(VEGF)の発現を抑制したことが示されている。また、乳がんモデルを用いた研究においては、腫瘍組織内の微小血管密度(MVD)の減少が確認されており、さらにRAW264.7マクロファージ細胞株において腫瘍随伴マクロファージの浸潤と血管新生を抑制したことが報告されている。

【宿主の免疫応答の強化と調節作用】

同検証によると、フアイア抽出物は細胞性免疫および体液性免疫を活性化する生理活性成分として機能する。具体的には、マクロファージの貪食能を強化し、ナチュラルキラー(NK)細胞の数と活性を増加させることが示されている。

また、Panら(2020年)の研究チームによる検証では、樹状細胞の成熟を促進し、CD4陽性T細胞の増殖を刺激してTh1亜群への分化を誘導することが確認されている。

【化学療法剤の感受性増強と副作用の軽減効果】

同検証によると、フアイア抽出物が化学療法剤に対する感受性を高め、多剤耐性を克服する可能性が示されている。乳がん担がんマウスを用いた研究において、パクリタキセルとフアイア抽出物の併用療法は、パクリタキセル単独投与群と比較して優れた腫瘍抑制効果を示し、PI3Kおよびリン酸化Akt(p-AKT)のレベルを減少させた。

さらに、Fangら(2019年)の研究チームによる検証では、フアイア多糖類がPI3K/Akt/mTOR経路を調節して酸化ストレスとアポトーシスを減少させることにより、シスプラチンによる腎毒性を軽減し、腎機能を保護したことが示されている。

 

獣医療への応用可能性と専門的考察

【臨床現場での活かし方】

本研究で示されたフアイア抽出物の多角的な抗腫瘍作用は、犬や猫の悪性腫瘍、特に大腸腺癌などの消化器系腫瘍における補助療法(アジュバント療法)として応用できる可能性を示唆している。標準的な外科的切除を行った後の再発防止ステージにおいて、低毒性で長期管理が可能な選択肢として経口給与を検討する価値がある。

また、高齢や既往歴により積極的な外科手術や化学療法を選択できない症例、あるいは飼い主様が標準治療を望まない場合の科学的セーフティネットを伴った緩和ケアの選択肢としても模索される。

【既存治療との比較】

従来の化学療法剤(5-FUやカルボプラチンなど)は、単一の標的や細胞分裂プロセスを阻害するため、副作用の発生や多剤耐性の獲得が臨床上の大きな課題となっている。これに対し、フアイア抽出物はアポトーシス誘導、血管新生阻害、免疫調節といったマルチターゲットな作用機序を持つため、耐性を獲得しにくいという利点がある。

さらに、既存の化学療法剤と併用することで、パクリタキセルやオキサリプラチンに対する感受性を増強し、シスプラチンによる腎毒性を軽減するというデータは、化学療法の副作用コントロールと治療成績向上の両立に寄与すると考えられる。

【研究の限界(Limitation)と批判的吟味】

本論文はヒトの医学研究およびマウスモデルを対象としたミニレビューであり、犬や猫における直接的な臨床エビデンスは依然として不足している。また、フアイア抽出物の抗腫瘍効果を担う単一の活性成分が完全には特定されておらず、多糖類とタンパク質の複合体として作用しているため、品質の均一性や薬物動態の把握が困難であるという限界がある。

さらに、犬や猫における代謝経路の種差、特に猫における多糖類の消化吸収能や肝臓での代謝能力(グルクロン酸抱合能の制限など)を考慮する必要があり、臨床応用にあたっては消化器症状などの副反応を慎重にモニタリングする必要がある。

 

読者のためのミニ用語集

  • フアイア抽出物:学名をTrametes Robiniophila Murrと呼ぶ薬用キノコから得られる抽出物であり、多糖類やタンパク質を主成分とする生理活性成分である。
  • 上皮間葉転換(EMT):上皮系細胞が極性を失い、遊走・浸潤能の高い間葉系細胞の表現型を獲得する現象であり、がんの浸潤や転移に深く関与する。
  • がん幹細胞(CSC):自己複製能と多能性を持ち、腫瘍の発生、再発、転移、および治療耐性の原因となるがん細胞の起源となる集団である。
  • 微小血管密度(MVD):腫瘍組織内における新しく形成された微小血管の密度であり、腫瘍の増殖や転移の指標として用いられる。
  • Th1亜群:ヘルパーT細胞の一種であり、インターフェロンガンマなどを産生して細胞性免疫を活性化し、腫瘍に対する免疫応答を主導する。

論文(本文)はこちら

本資料は動物医療関係者向けの学術的参考情報です。一般飼い主向け広告ではなく、特定の疾病に対する診断、治療、予防または効果を保証するものではありません。本品は動物用医薬品として承認されたものではありません。無断転載・転送・一般飼い主への配布を禁じます。