【症例】消化管好酸球性硬化性線維増殖症(FGESF)疑いの猫(マンチカン)
症例提供:福岡県内 動物病院(獣医師)
標準的な免疫抑制療法に対して副作用を示し治療継続が困難となった消化管好酸球性硬化性線維増殖症(FGESF)疑いの症例に対し、フアイアを給与した症例
フアイア給与概要
| 給与量 | 給与期間 |
| 1倍量 | 24日間 |
| 2〜3倍量 | 300日間~ |
※犬猫用として
症例基本情報
|
動物種/品種 |
猫 / マンチカン |
| 年齢/性別 | 2021年11月21日 / 去勢雄 |
| 初診日 |
2022年10月26日 |
| 主訴 | 元気がなく、黒色便(激しい消化管出血)を呈する |
| 既往歴/背景 | 0歳時に激しい嘔吐で入院歴があり、その時点ですでにリンパ節の腫大が確認されていた。2026年5月にFIV、FeLVの陰性を確認。 |
症例概要
【検査・診断】
超音波検査において十二指腸幽門側の拡張および上腹部リンパ節の複数腫脹が確認され、血液検査では末梢血における好酸球の増多が認められた。他疾患を除外するため試験開腹を実施し、十二指腸パンチ生検の病理組織検査から「FGESFを第一に考える」との診断に至った。
【課題の特定】
消化器症状を抑えるために用いられる標準的な免疫抑制剤(プレドニゾロン、シクロスポリン)の長期投与中に、皮膚が破れるなどの脆弱化が発現し、コントロールが難航した。さらに、代替薬として導入したミコフェノール酸モフェチル(MMF)によって、白血球数が減少するという重篤な骨髄抑制が引き起こされ、既存の免疫抑制剤でのコントロールが難しい状況下であった。
治療経過・併用戦略
【導入期】
Day18よりプレドニゾロンを 1mg/kg SID(1日1回)で開始したのち、状況の改善が認められていなかったため、Day20からは 2mg/kg SID に増量した。ステロイドの増量にもかかわらず、症状の改善が認められていなかったため、Day28にシクロスポリンを (8mg/kg SID)追加した。
その後、プレドニゾロンの用量調整(0.1mg〜0.05mg/dayずつ)を行い減薬を進めていたが、Day45頃に皮膚の紫斑や裂開といったステロイドによる副作用が確認された。そのため、内服へ切り替えを行いながら、Day68にはステロイドを完全に休薬した。
以降はシクロスポリン単独で維持し、飼い主様の費用負担の観点からEOD(隔日投与)や週3回へと少しずつ投与頻度が少なくなっており、Day418より休薬していた。
【調整期】
休薬後も半年ほどは症状が出なかったが、Day614に40.3度の発熱、黄疸、白血球増多(22,900/μL)、GPT上昇(1990 U/L)など、重度の胆管系感染症を疑う症状が現れた。抗生剤(アモキシシリン・クラブラン酸 25mg/kg BID)などの対症療法で感染を鎮めたが、消化器症状が再燃したため、Day740よりシクロスポリンを 7.5 mg/kg SIDにて再開した。
しかしながら、その後も嘔吐が頻発し、Day861からはミコフェノール酸モフェチル(MMF)へ切り替え(12mg/kg BID)症状の管理を行った。
【維持期】
飼い主様の転居を機に院内にて本猫を譲り受け、治療を引き継ぎDay917より補助療法としてフアイア糖鎖TPG-1を1倍量で給与開始した。ところが、Day941にかけて白血球数が1,000/μLまで激減し、MMFによる重篤な骨髄抑制が発現したためMMFを中止。同日よりフアイア糖鎖TPG-1を2〜3倍量へと増量し単独での経過を観察した。
並行して、耳の赤みや下唇の潰瘍から食物アレルギーの関与を疑い、食事をチキンフィーストへと変更する多角的なアプローチを取り入れた。
臨床経過・データ推移
| Day |
体重( |
フアイア |
治療内容(薬剤等・頻度) | 備考/状態 |
| 0 | 5.7 | - | - | 黒色便・元気消失 |
| 18 | - | - | プレドニゾロン 1mg/kg SID開始 (Day20で2mg/kg SIDに変更) |
症状の変化が見られず。 |
| 28 | 約4.1 | - | プレドニゾロン 2mg/kg SID シクロスポリン 8mg/kg SID |
シクロスポリン開始以降、黒色便・貧血が改善され始める |
| 45 | - | - | プレドニゾロン減薬中、 シクロスポリン継続 |
紫斑、皮膚の裂開 プレドニゾロンはDay 59に完全休薬 |
| 614 | - | - | アモキシシリン・クラブラン酸(25mg/kg BID) | Day418でシクロスポリン含め休薬していた。 40.3度の発熱、黄疸と、 感染所見が認められ治療開始。 |
| 740 | 6.1 | - | シクロスポリン 7.5 mg/kg SID にて再開 |
感染コントロール後に 消化器症状が出始めたため再開 |
| 861 | 6.9 | - | MMF(約12mg/kg BID) へ変更 |
頻回嘔吐の継続に対し、シクロスポリン再開後もコントロール不良 MMF開始により嘔吐頻度減少するが、完全消失ではない |
| 917 | - | 1 | MMF継続 | 当院への譲り受けを機にフアイアを導入 以後、継続的に下痢(後に牛乳由来のサプリメントが原因と推測) |
| 941 | 5.4 | 2〜3 | MMF中止 | 症状がまだ認められている中で、 MMFによる骨髄抑制が発現し、MMF中止 フアイア単独投与 アレルギーを想定して食事内容を整理し始める |
| 1253〜 | - | 2〜3 | - | 消化器症状は消失。 食事の変更も実施。 エコー上の肥厚は残るがQOLは極めて安定 |
【変化の要約】
Day941において、免疫抑制剤(MMF)の重篤な副作用により白血球数が1,000/μLまで激減し、命の危機に瀕したが、MMFを中止しフアイアの単独での管理に切り替えたところ、下痢や黒色便といった重篤な消化器症状が良好に推移し始めた。
食事療法の相乗効果か、現在に至るまで寒い日に偶発的に嘔吐する程度にまで病態は安定しており、「フアイアがなければかなり危ない状況までいった可能性があった」と推測されるほどの活力を取り戻し、飼い主と共に穏やかで良好なQOLを維持している。
考察
【治療のポイント】
FGESFは一般的に免疫抑制による治療が標準治療である。しかし、本症例のように「薬の効果は認められるものの、皮膚の脆弱化や重篤な骨髄抑制などの副作用に体が耐えられない」という状況は、一次診療の現場で獣医師と飼い主様が直面するケースがあると考えられる。
初期治療によりある程度病態が整理された「維持期」での代替であったことも成功の要因として考えられるが、フアイアによる健やかな免疫調節機能(イムノモジュレーション)が、結果として良好なQOLの維持に寄与した可能性が示唆される一例である。
【併用による相乗効果】
経過中に皮膚症状などから食物アレルギー(牛乳や牛肉など)の関与が浮上したため、食事の変更を実施している。本病態との直接的な因果関係は明確ではないが、こうした多角的なアプローチが腸内環境やアレルギー反応を落ち着かせる上で相乗効果を発揮したと考えられる。
【結語】
重度の副作用により標準治療での管理が難しい、難治性のFGESFにおいて、フアイアがその治療の一助となる可能性が示唆される。
基本的には標準治療との併用からスタートすることが推奨されるが、本症例のように標準治療の継続が困難な症例に対して、別の選択肢があることは、獣医師の治療戦略の幅を広げる可能性があった一例である。今後も同様の知見を集積していくことが必要だと考えられる。