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【症例】柴犬の肉腫NOSに対する外科的切除およびフアイア糖鎖TPG-1の併用による統合アプローチにより良好なQOLが維持されている一例

症例提供:岐阜県内 動物病院(獣医師)

  

14歳柴犬の「グレードI相当・右前肢手根部・肉腫NOS」に対する術後の局所再発防止として、フアイア糖鎖TPG-1の併用給与および栄養管理を実施した結果、併存する慢性腎臓病および一時的な肝酵素上昇のコントロールが得られ、術後2年以上、腫瘍の局所再発や遠隔転移を認めることなくQOLの維持が観察された例。 

症例基本情報


動物種/品種

犬 /  柴犬
年齢/性別 17歳8ヶ月 / 避妊雌
初診日

2023年11月22日(Day0)

主訴 右前肢手根部における皮下腫瘤・腫脹
既往歴/背景 糖鎖栄養素含有サプリメント 、冬虫夏草培養物・有機ゲルマニウム含有サプリメントの給与歴とウルソデオキシコール酸の投与歴あり。
バランスよく配合した手作り食(※)を実践。加齢に伴う腰痛および変形性関節症傾向、慢性腎臓病(CKD疑い)、肝酵素上昇を認める。

※内容:タンパク源(鶏むね肉・もも肉・納豆・豆腐)、炭水化物(白米・里芋・サツマイモ)、野菜類(アスパラガス、オクラ、ブロッコリー、人参、カブ)などからカロリー計算を行い給与実施

臨床所見および診断プロセス

    【検査所見・画像所見】 

    ■視診・触診および画像所見

    2023年11月22日(Day0)の初診時、右前肢手根部皮下に境界不明瞭な腫瘤巣を確認。画像診断において遠隔転移を示唆する明確な組織異常は検出されなかった。FNA(針生検)による細胞診にて明確な間葉系腫瘍細胞が採取された。
    2023年12月25日(Day33)に当院にて皮下腫瘤摘出術および前進皮弁術を実施。病理組織学的検査では、皮下組織にかけて中等量の膠原繊維増生を伴う紡錘形間葉系腫瘍細胞が花筵状〜不規則に増殖しており、核の異型性は中等度、有糸分裂像は6個/10HPF散見された。脈管内浸潤は認められなかったものの、サージカルマージンは近接切除(腫瘍組織近傍での切除)と判定された。

    ■除外診断および確定診断

      

    ・確定診断名
    肉腫NOS(Not Otherwise Specified:特定不能の肉腫、組織学的グレードI相当)。

    ・除外診断の根拠
    腫瘍組織に明確な細胞分化傾向が認められないため肉腫NOSと診断されたが、鑑別疾患として大血管周皮腫や悪性末梢神経鞘腫などが挙げられた。サージカルマージンが近接切除であったことから、不完全切除に準じた厳重な局所再発への警戒が必要と判断された。

       

    ▲術後            

      

    ▲直近の様子(DAY1,008)

    治療的介入(併用戦略)

      【標準治療の内容】

      ■標準治療の内容

      右前肢腫瘤の外科的限界切除術および前進皮弁術。手術直後に非ステロイド性抗炎症薬(カルプロフェン)を一時使用(4.1mg/kg SID)。また、肝胆道系サポートとしてウルソデオキシコール酸(10 mg/kg BID)を継続投与。

      フアイア糖鎖TPG-1の給与:

      ・給与量
       1.5倍量。毎日の手作り食に混ぜて給与。

      ・給与期間
       2024年7月29日(Day242)より給与。

      ・投与を開始した臨床的理由
      切除マージンが近接していたことから、術後は局所再発に留意した継続的な経過観察が必要と判断された。また、14歳を超える高齢犬であり、併存疾患を含めた全身状態を考慮しながら長期的な健康管理を行う必要があった。そこで、標準治療である外科的切除後の補助的な健康管理の一環として、免疫系への作用が基礎研究等で報告されているフアイア糖鎖TPG-1の給与を開始した。

       経過と結果 

      【検査数値推移表】

      Day 体重
      (kg)

      フアイア糖鎖TPG-1給与量
      (倍量)

      AST
      (U/L)
      ALT
      (U/L)
      ALP
      (U/L)
      BUN
      (mg/dL)

      Cre
      (mg/dL) 
      併用薬/備考  
      0 12.0 - 27 76 169 - - 右前肢腫瘤確認。  
      33  -  -  -  -  -  -  - 外科的切除術実施、カルプロフェン使用  
      69  -  -  -  -  -  -  - 創部治癒良好  
      147 11.7  - 49 119 180 45.8 1.42 肝酵素上昇およびCKD疑い。  
      242 12.3 1.5 32 57  87  52.9 1.58 ウルソデオキシコール酸(10mg/kg BID)・手作り食開始。
      肝酵素正常化
       
      506 12.2 1.5 53 192 189 58.5 1.66 食事タンパク量の減量指示  
      560 11.7 1.5 83 - 98 42.3 1.51 数値の改善傾向を確認  
      711 10.1 1.5 40 74 85 36.6 1.51 肝・腎数値ともに安定維持  
      892 9.5  1.5  47 79 208 43.2 1.51 無再発維持  
      1,008 8.7 1.5  -  -  -  -  - 食欲旺盛、再発・転移なし  

      ■臨床的意義

      犬の皮膚・皮下軟部組織肉腫(soft tissue sarcoma:STS)は、局所浸潤性を示す一方、その生物学的挙動は組織学的グレード、有糸分裂数、切除マージンなどによって異なることが報告されている。Dennisらのレビューでは、外科切除後の局所再発率は7~30%、転移率は最大17%程度と報告されており、外科切除後の生存期間中央値は1,013~1,416日とされている[1]。

      本症例では、有糸分裂像は6個/10 HPFであった。Dennisらのレビューでは、犬のSTSにおいて「高い有糸分裂数」の基準として用いられた最も低いカットオフ値は9個/10 HPFであり、高い有糸分裂数は再発、転移および生存期間短縮との関連が報告されている[1]。したがって、本症例の有糸分裂数は、既報における高リスク域には該当しなかった。

      一方、本症例では切除マージンが近接していたため、局所再発の可能性を完全には除外できず、長期的な経過観察が必要と判断された。McSporranの報告では、辺縁切除されたGrade Iの皮下STSにおける局所再発は41例中3例(7%)であった一方、Grade IIでは41例中14例(35%)、Grade IIIでは4例中3例(75%)であり、切除マージンだけでなく組織学的グレードが局所再発に大きく関係することが示されている[2]。
      したがって、本症例は近接マージンという局所再発への注意を要する所見を有する一方、低い有糸分裂数など、比較的良好な予後を示唆する所見も有していたと考えられる。

      本症例では外科的切除後の長期的な健康管理の一環として、Day242からフアイア糖鎖TPG-1を補助的に継続給与した。2026年9月15日(Day1,008)まで、術後約2年8か月にわたり臨床的な局所再発および遠隔転移は確認されておらず、食欲を含む全身状態も維持されている。

      ただし、低グレードSTSでは近接マージンであっても再発しない症例が多く報告されていることから[1,2]、本症例の長期無再発経過をフアイア糖鎖TPG-1の給与効果として直接評価することはできない。

      また、犬のSTSでは転移が確認されるまで3年以上を要する症例も報告されているため[1]、現在までの無再発・無転移という結果のみをもって治癒と判断することはできず、今後も継続した経過観察が必要である。

      ■本報告の限界(Limitation)

      本事例は単一の臨床症例報告であり、得られた良好な経過がフアイア糖鎖TPG-1単独の効果によるものと断定することはできない。

      また複合的に様々な治療を行っているため多角的な統合療法の相互作用が含まれている。そのため、特定の単一因子のみによる効果の評価には限界がある。

      本症例は、フアイア糖鎖TPG-1を含む補助的管理下で良好な長期経過が観察された一例として位置付けられ、今後は同様の症例の集積や、腫瘍グレード、切除マージン、併用治療などを考慮した客観的な検証が必要である。

      ■結語

      本症例は、高齢かつ慢性腎臓病および肝酵素上昇を併存する肉腫NOS症例に対し、外科的切除後の補助的管理としてフアイア糖鎖TPG-1の継続給与および栄養管理を行い、術後約2年8か月にわたり臨床的な局所再発・遠隔転移を認めることなく、良好なQOLが維持されている一例である。

      一方、本症例は低グレードで比較的良好な予後因子を有していたこと、複数の治療・栄養管理が併用されていたことから、現在までの良好な経過をフアイア糖鎖TPG-1単独の効果として評価することはできない。

      本症例の経過は、高齢犬における軟部組織肉腫の術後管理において、標準治療を基盤としながら、全身状態やQOLを考慮した補助的管理を長期的に継続することの臨床的意義が考える一例であるといえる。

       フアイア糖鎖TPG-1の給与期間中において、嘔吐、下痢、軟便等の消化器症状や、その他の臨床的な有害事象は観察されなかった。

       

      参考文献

      【臨床的意義】

      1.Dennis MM, McSporran KD, Bacon NJ, Schulman FY, Foster RA, Powers BE. Prognostic factors for cutaneous and subcutaneous soft tissue sarcomas in dogs. Veterinary Pathology. 2011;48(1):73-84. doi:10.1177/0300985810388820. PMID: 21139143.

      2.McSporran KD. Histologic grade predicts recurrence for marginally excised canine subcutaneous soft tissue sarcomas. Veterinary Pathology. 2009;46(5):928-933. doi:10.1354/vp.08-VP-0277-M-FL. PMID: 19429989.

       

      本資料は動物医療関係者向けの学術的参考情報です。一般飼い主向け広告ではなく、特定の疾病に対する診断、治療、予防または効果を保証するものではありません。本品は動物用医薬品として承認されたものではありません。無断転載・転送・一般飼い主への配布を禁じます。