【症例】犬の移行上皮がんまたは前立腺がん疑いに対し、フアイア糖鎖TPG-1の給与により腫瘍増大抑制と良好なQOL維持が得られた一例
症例提供:埼玉県内 動物病院(獣医師)
膀胱三角部から前立腺領域にかけて明確な腫瘤を認め、補助療法としてフアイア糖鎖TPG-1を継続給与した結果、腫瘤の拡大や排尿障害、遠隔転移を伴うことなく良好な全身状態を維持できた症例。
症例基本情報
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品種 |
MIX(ヨークシャー・テリア×マルチーズ) |
| 年齢/性別 | 17歳4ヶ月(2009年3月27日生)/ 去勢雄 |
| 初診日 |
2025年8月21日 |
| 主訴 | 血尿 |
| 既往歴/背景 | 尿路結石の既往なし。 2017年の初診以降、重度の歯周病に対して定期的な管理および複数回のスケーリングを実施。 アレルギー性皮膚炎(アトピー性の疑い、必要に応じてオクラシチニブを頓服投与)。 高ALP血症および胆泥症(2025年3月27日時点でALP 575 U/L、ウルソなどの内服は行わず経過観察)。 肝臓の腫瘤疑い(細胞診では明らかな悪性所見は認められず、高分化型肝細胞がんあるいは腺腫の疑いとして経過観察中)。 |
臨床所見および診断プロセス
【検査所見・画像所見】
持続的な血尿を主訴に来院(Day0)。腹部超音波(エコー)検査において、膀胱三角部から前立腺入り口付近の領域にかけて、境界明瞭な腫瘤像(MASS)を確認した。
Day0における初期エコー測定値:
- 膀胱三角部/MASS(最大径測定角度): 18.2 mm × 15.5 mm (画像1)
- 前立腺部/Prostate(別角度): 16.6 mm × 16.1 mm(および単径 17.3 mm)(画像2)

▲エコー画像1

▲エコー画像2
- 胸部および腹部レントゲン検査において、所属リンパ節への転移および遠隔臓器(肺など)への転移を示す所見は認められなかった(転移像なし)。
- 尿中遺伝子検査(BRAF遺伝子変異、MEKエクソン欠損変異)を外部機関にて実施した結果、いずれの遺伝子変異も検出されず(陰性)であった。
- 細胞診検査においては、多数の移行上皮細胞が採取され、核異型性、核細胞質分化・成熟異常、N/C比のばらつきなどが認められたが、直ちに悪性と断定できるレベルの異常所見ではなく、「良性病変(移行上皮細胞過形成、移行上皮乳頭腫等)と移行上皮がんの境界的所見」と判定された。
- 病変の発生位置(解剖学的部位)、臨床画像所見および血尿の持続から、臨床的には「移行上皮がん」または「前立腺がん」の可能性が否定できない暫定的な病態と診断した。
【除外診断および確定診断】
- 除外診断: 血尿および出血の原因として、表在性の感染性病変(包皮炎など)を疑ったが、エコー検査における明確な腫瘤像の存在から、単純な表在性炎症単独による病態は除外された。また、エコー検査および病歴から、血尿の原因としての尿路結石症(尿石症)は陰性として除外された。
- 確定診断(暫定): 膀胱三角部〜前立腺領域の腫瘤(移行上皮がん、または前立腺がんの疑い)。
治療的介入(併用戦略)
標準治療の内容:
- 17歳の高齢であること、および腎機能低下のリスク(尿毒症や腎不全発症リスク)を考慮し、外科手術や抗がん剤等の侵襲的治療、および非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDs)の常時処方は、飼い主の意向も含めて実施を見送った。
- 経過観察中に偶発する「細菌性膀胱炎」の再発時に対しては、その都度抗生剤を頓服処方した。
フアイアの給与:
- 給与量: 1倍量
- 給与期間:Day0〜Day364(約1年間継続中)。
- 投与を開始した臨床的理由: 高齢により抗がん剤等の積極治療が難しく、かつ腎毒性リスクからNSAIDsの常用も避けるべき尿路系腫瘍病態において、腫瘍の進行抑制とQOLを安全に維持するための補助療法を検討し、そこでフアイア糖鎖TPG-1が現実的な選択肢として選定された。
経過と結果
【時系列サマリー】
- 2017年: 重度の歯周病およびアレルギー性皮膚炎の管理を当院にて開始。以降、定期的なスケーリング等を適宜実施。
- 2025年3月27日: 定期血液検査にてALP 575 U/Lと高値を認め、エコー検査にて胆泥症を確認。経過観察を継続。
- Day0: 体重5.28kg。持続性血尿の精査により超音波検査にて膀胱三角部〜前立腺にかけて腫瘤を同定。尿中BRAF/MEK遺伝子変異陰性、細胞診良悪性境界的所見。高齢および腎リスクのため標準的な積極治療を断念し、補助療法としてフアイア糖鎖TPG-1(1倍量)の給与を開始。
- Day0〜Day364(約1年間): 2〜3ヶ月に1回の頻度で定期的なエコー検査を実施。偶発的な細菌性膀胱炎の発症時に抗生剤を頓服投与する以外は、フアイア糖鎖TPG-1(1倍量)の単独給与を継続。
- Day304(給与開始から10ヶ月後):定期超音波検査を実施。
- 前立腺部/Prostate角度: 14.6 mm × 12.2 mm (画像3)。初診時同角度(16.6 mm × 16.1 mm)から維持〜軽度縮小。
- 膀胱三角部/MASS角度: 初診時の最大径測定角度(18.2 mm × 15.5 mm)に合わせた画像に基づき、16.2 mm × 16.6 mm (画像4)と判定された。
- 異なる2系統の測定角度(膀胱三角部および前立腺部)のいずれにおいても腫瘤の顕著な増大傾向は認められず、サイズおよび局所状態は安定して維持されている。尿路閉塞に伴う排尿障害は現在まで発症していない。
Day364: 体重は4.8〜5.0kg(Day0より微減だが過去の変動範囲内)で推移しており、高齢ながら極端な痩削や活性低下はなく、良好なQOLが維持されている。

▲エコー画像3

▲エコー画像4
【検査数値推移表】
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Day |
TPG-1の |
エコー所見 |
体重 |
併用薬/備考 |
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2025年3月27日 |
- |
膀胱・前立腺領域に異常なし(胆泥症あり) |
- |
ALP 575 U/L、胆泥症の経過観察 |
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0 |
1 |
① 膀胱三角部/MASS最大径:18.2 mm × 15.5 mm (画像1) |
5.28 |
細菌性膀胱炎時の抗生剤一時使用、アレルギー性皮膚炎に対するオクラシチニブ頓服 |
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304 |
1 |
① 膀胱三角部/MASS(※初診と同角度での後方視的計測):16.2 mm × 16.6 mm (画像4) |
4.8 〜 5.0 |
細菌性膀胱炎時の抗生剤一時使用、オクラシチニブ頓服 |
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364 |
1 |
局所の安定維持、排尿障害や新たな転移像なし |
4.8 〜 5.0 |
心疾患等の合併なし、全身状態良好 |
フアイア糖鎖TPG-1の給与開始から現在に至る約1年間の全観察期間を通じて、嘔吐、下痢、軟便などの消化器症状や、その他臨床上問題となる副作用・有害事象は確認されなかった。
考察
臨床的意義:
尿路閉塞を誘発しやすく一般的に進行が早い膀胱三角部〜前立腺領域の腫瘤に対し、抗がん剤や常用NSAIDsなどの積極的化学療法を全く行わないフアイア糖鎖TPG-1単独給与下において、約1年間にわたる病態コントロールと良好なQOL維持が達成された事実は臨床的意義が大きい。膀胱三角部/MASS角度では 18.2 mm × 15.5 mm から 16.2 mm × 16.6 mm への実質的なサイズ維持、前立腺部/Prostate角度では 16.6 mm × 16.1 mm から 14.6 mm × 12.2 mm への微減/維持が客観的に裏付けられた。これはフアイア糖鎖TPG-1の持つ生体内免疫の調整機能や微小環境の改善を介した抗腫瘍活性が、高齢の免疫監視機構を好適に維持した結果である可能性を示唆している。
本報告の限界(Limitation):
本報告は単一症例に基づく経過観察であり、組織生検による病理学的な確定診断(悪性腫瘍と過形成等の完全な病理学的識別)を行っておらず、細胞診による「境界的所見(移行上皮がん・前立腺がんの疑い)」に留まる点である。そのため、病変が本質的に良性腫瘍や低悪性度の過形成であり、その緩徐な自然経過自体が良好維持に寄与した可能性を完全に排除することはできない。また、偶発的な細菌性膀胱炎の発症時に処方された抗生剤が、局所の二次感染とそれに伴う炎症性浮腫の消退を導き、腫瘤周辺の物理的・臨床的安定化に寄与した可能性について留意する必要がある。
結語:
本症例の結果より、高齢、あるいは臓器機能不全リスク(腎障害リスクなど)の存在から標準治療(外科手術、抗がん剤、NSAIDs等)の実施が困難な腫瘍患者において、フアイア糖鎖TPG-1は、安全に腫瘍増大を抑制し良好な生存期間・QOLを確保するための、有用な補助療法の選択肢となり得ることが示唆された。