【症例】腎臓腫瘤で糖尿病・低血糖を併発した日本猫
症例提供:兵庫県内 動物病院(獣医師)
低血糖を呈する腎臓腫瘤に対し、インスリン調整とともにフアイア糖鎖TPG-1で緩和ケアを実施した症例。
フアイア給与概要
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給与量 |
給与期間 |
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2倍量 |
約60日間〜 |
症例基本情報
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品種 |
日本猫 |
| 年齢/性別 | 17歳/ 去勢雄 |
| 初診日 |
2018年3月13日 |
| 主訴 | インスリン減量に反応しないフルクトサミンの低値、およびそれに伴う低血糖傾向の継続 |
| 既往歴/背景 |
10歳:膀胱炎を繰り返し発症。食事療法による管理へ移行し、以降コントロールは良好。 11歳:糖尿病を発症。長期にわたりインスリン(プロジンク)治療(当初は1.5 IU BID等で維持)を継続。 13歳:膵炎を発症。点滴などの対症療法にて軽快。発症時に体重が6.5kgまで減少したが、その後7.0kgまで回復。 15歳:歯周病(軽度の口臭)の確認。高齢および麻酔リスクからスケーリング等の積極的処置は見送り、経過観察。食欲は維持。 その他背景:完全室内短頭飼育。予防関連は2018年のワクチン接種を最後に未実施、ノミ・マダニ・フィラリア予防も未実施。FeLV/FIVは未検査だが、臨床所見より感染の可能性は低い。 |
症例概要
【検査・診断】
長らく糖尿病治療を続けてきた中で、Day2735頃よりインスリン量を減量しているにもかかわらず、フルクトサミン値が急激に低下(低血糖傾向)する異常が確認された。Day2795に腹部エコー検査を実施したところ、左腎臓の後極に20.4 mm × 24.6 mmの孤立性腫瘤が発見された。エコーの画像所見からリンパ腫の可能性は低く、腎細胞がんまたは腎腺癌などの腎臓腫瘍に起因する低血糖傾向(腫瘍随伴症候群)が強く疑われた。なお、心エコー検査および聴診等の循環器評価では特記すべき異常は認められなかった。

▲エコー画像(Day2795):腎臓腫瘤発見時
【課題の特定】
17歳という高齢であること、性格的に動物病院で暴れてしまう傾向があることから、腫瘤の確定診断に必要なFNA(針生検)や外科手術を実施するには鎮静や麻酔が必須であり、身体的リスクが高い状態であった。ご家族も積極的な追加検査や侵襲的治療を希望されなかったため、腫瘤による低血糖症状をコントロールしながら、QOLを維持できるかが本症例の課題となった。
治療経過・併用戦略
標準治療:
糖尿病管理としてインスリンの投与、膀胱炎および体重管理のための療法食(ロイヤルカナン ユリナリーS/O + 満腹感サポート CLT)をベースに、尿路結石・膀胱炎再発防止のためのウロアクトプラス(1日2粒)の給与を継続した。
独自の工夫:
積極的治療を行わない緩和管理下において、腫瘍の進行抑制と全身の免疫バランス維持を期待し、身体的負担のない非侵襲的なフアイア糖鎖TPG-1の給与を開始した。また、便がやや硬くなる傾向が見られたため、ご家族と相談の上、猫用整腸剤であるにゃんビオフェルミン(粉末、体重相応量)をフアイア糖鎖TPG-1に混合して給与するアプローチを取り入れた。
維持期:
腫瘍の進行を抑え、細やかなインスリン調整によって低血糖状態を回避すること、そして本症例がご家族のそばで元気に過ごせる穏やかな時間を、無理のない範囲で1日でも長く延ばすことを目標とした。
臨床経過・データ推移
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Day |
フアイア糖鎖 |
インスリン |
フルクト |
体重 |
左腎腫瘤 |
備考・臨床状態 |
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2283 |
- |
1.5 IU BID |
322 |
6.98 |
- |
糖尿病管理期 |
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2359 |
- |
AM 1.5 IU / |
325 |
7.32 |
- |
血糖値コントロール安定 |
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2421 |
- |
1.25 IU BID |
305 |
7.40 |
- |
定期健診 |
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2546 |
- |
AM 1.0 IU / |
233 |
7.20 |
- |
フルクトサミンが低下傾向を示しインスリン減量 |
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2639 |
- |
0.5 IU BID |
271 |
7.20 |
- |
BUN 28, CRE 1.5, GLU 110 と推移安定 |
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2735 |
- |
0.5 IU SID |
253 |
7.20 |
- |
さらにフルクトサミンが低下し、インスリン減量 |
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2791 |
- |
0.5 IU EOD |
258 |
7.05 |
- |
低血糖を疑う数値のため、さらにインスリン減量 |
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2795 |
- |
0.5 IU EOD |
- |
7.10 |
20.4 × 24.6 |
エコー検査にて左腎臓後極に腫瘤を発見 |
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2799 |
2 |
0.5 IU EOD |
- |
7.10 |
- |
フアイア糖鎖TPG-1、にゃんビオフェルミン(1日2〜3杯)給与開始 |
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2830 |
2 |
0.5 IU EOD |
387 |
7.00 |
22.3 × 20.9 |
給与約1ヶ月 |
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2862 |
2 |
0.5 IU SID |
347 |
7.05 |
21.7 × 20.1 |
給与約2ヶ月半 |

▲Day2830

▲Day2862
【変化の要約】
フアイア糖鎖TPG-1の給与開始から約2ヶ月半が経過した現在、エコー検査における左腎腫瘤のサイズは、発見時の20.4 mm × 24.6 mmに対し、Day2862の測定では21.7 mm × 20.1 mmと明らかな増大は見られず、むしろ微縮小傾向を示している。また、インスリン減量に反応せず低下を続けていたフルクトサミン値は、給与開始後に300 µmol/L台の良好な管理基準値内(347〜387 µmol/L)へと持ち直し、安定化が確認された。これに伴い、インスリン投与頻度も1日おきから1日1回に戻すことができ、自宅での元気・食欲も旺盛で、体重も7.05kgをキープしながら、穏やかな日常を送ることができている。
結語
積極的な治療が困難な高齢動物において、「今の健やかな状態をいかに維持するか」に焦点を当てた本症例は、緩和ケアのひとつの形と言える。ご家族の不安に誠実に寄り添いながら、負担の少ない選択肢を提示することで、動物たちとそのご家族に納得感のある穏やかな時間をもたらすことができるという希望を示す症例となった。