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【症例】脾臓血管肉腫のビションフリーゼ

症例提供:北海道内 動物病院(獣医師)

脾臓血管肉腫に対し、抗がん剤を使わずステロイドとフアイア糖鎖TPG-1の併用でQOLを維持し、重篤な状態を複数回乗り越えて家族との穏やかな時間を延長できた症例。

 

フアイア給与概要


給与量

給与期間

4倍量

96日間

 

症例基本情報


品種

ビションフリーゼ
年齢/性別  9歳(2016年9月12日生)/ 去勢雄
初診日
2026年3月5日(Day0)
主訴 嘔吐、血腹(腹部膨満・元気消失)
既往歴/背景

2026年1月にスケーリングを実施。その際の術前検査や血液検査では、明確な腫瘍等の異常所見は認められていなかった。それ以外の病歴や体調不良の既往はなし。

 


症例概要

    【検査・診断】 

    初診時の血液検査にて、HT(ヘマトクリット)35%、PLT(血小板)3.0万、CRP 2.9と異常値が認められ、腹水(HT 30%)を伴う血腹が確認された。画像診断にて脾頭部に5cm大の腫瘤が確認されたため内科的治療で状態を安定させた後、Day3に脾臓摘出術を実施した。その後の病理組織検査結果により「血管肉腫」であることが確定した。なお、術前のレントゲン等では近傍リンパ節や他臓器への明らかな転移所見は確認されていなかった。

     

    【課題の特定】

    2026年1月時点では異常がなかったにもかかわらず短期間で脾臓破裂に至ったことから、非常に進行が早く予後が厳しいタイプの腫瘍であると推測された。ご家族は抗がん剤治療を選択されなかったため、再発や遠隔転移のリスクが高い状況下において、苦痛緩和ならびにQOLの維持・向上が主要な課題となった。

     

    治療経過・併用戦略

      標準治療:
      初診時の血腹・嘔吐に対し、すべて皮下注射にてプレドニゾロン (1mg/kg)、トラネキサム酸(10mg/kg)、カルバゾクロムスルホン酸Na(0.5mg/kg)、ファモチジン (1mg/kg)、メトクロプラミド (0.5mg/kg)を投与し、内科的安定を図った。術前までの3日間は、止血管理としてトラネキサム酸(16mg/kg BID)およびカルバゾクロムスルホン酸Na(2mg/kg BID)を処方・内服させた。体調の回復と腹水の消失(HT 45%へ改善)を確認した上で、Day3に脾臓摘出術を実施した。

      独自の工夫:
      経験上術後にステロイド等を用いても1ヶ月〜1.5ヶ月程度で著しく体調が低下する症例が多いことから、術後(Day7)より、抗がん剤に代わる全身状態の強力なサポートとしてフアイア糖鎖TPG-1を4倍量で給与した。DAy52に右心耳への転移による心タンポナーデを発症した際には、プレドニゾロン 0.7mg/kg SIDの投与を開始して心嚢水を消失させた。心嚢水が再貯留したDay91にはプレドニゾロンを1.2mg/kg SIDへ増量し、症状に対応しつつフアイア糖鎖TPG-1の併用を継続した。

      目標設定:
      病棟での延命治療ではなく、ご自宅でご家族と一緒に「美味しくごはんを食べ、穏やかに過ごす」というQOLの最大化を目標に、的確な対症療法とサプリメントによる支持療法を組み合わせた。


      臨床経過・データ推移

       
       

      Day

      フアイア糖鎖
      TPG-1の
      給与量
      (倍量)

      体重
      (kg)

      HT / PLT

      プレドニゾロン
      用量

      止血剤・その他の投薬

      腫瘤サイズ・心嚢水の状況

      備考/状態

      0

      -

      7.7kg

      35% / 3.0万

      1mg/kg SC

      トラネキサム酸10mg/kg SC
      カルバゾクロムスルホン酸Na0.5mg/kg SC
      ファモチジン1mg/kg SC
      メトクロプラミド0.5mg/kg SC

      脾頭部5cm大 / 血腹あり

      嘔吐・血腹
      内科的集中的処置

      0〜3

      -

      -

      -

      -

      トラネキサム酸 16mg/kg BID
      カルバゾクロムスルホン酸Na 2mg/kg BID

      -

      処方・内服管理

      3

      -

      -

      45% / -

      -

      -

      腹水消失

      体調回復
      脾臓摘出実施

      7

      4

      -

      -

      休薬・終了

      -

      -

      術後経過良好
      抗がん剤は非選択

      29

      4

      7.4

      -

      -

      -

      転移像なし

      1ヶ月健診
      体調良好

      52

      4

      7.55

      -

      0.7mg/kg SID開始

      -

      転移確認
      肝2×3cm / 右心耳1.8×1.3cm / 心嚢水あり

      元気なし
      心タンポナーデ発症

      57

      4

      7.7

      -

      0.7mg/kg SID

      -

      心嚢水消失

      食欲が凄い

      71

      4

      7.95

      -

      0.7mg/kg SID

      -

      肝4.2cm / 右心耳3.1cmへ増大

      一般状態良好

      81

      4

      8.25

      -

      0.7mg/kg SID

      -

      肺野転移なし / 右心耳は明確

      状態良好

      91

      4

      -

      22% / -

      1.2mg/kg SIDへ増量

      -

      右心耳5cm大 / 心嚢水あり

      食欲低下
      心タンポナーデ再発

      94

      4

      8.3

      -

      1.2mg/kg SID

      -

      心嚢水消失

      体調回復

      102

      4

      -

      -

      1.2mg/kg SID

      -

      右心耳6cm超 / 重度心嚢水

      元気食欲消失
      重度のタンポナーデ

      103

      -

      -

      -

      -

      -

      -

      自宅にて永眠

       
       

      image-png-Aug-03-2026-07-53-00-0737-AM
        ▲Day81 右心耳の腫瘤所見



        ▲Day102 心嚢水の貯留

       

      【変化の要約】

      初診時の皮下注射および3日間の止血剤処方により血腹状態から回復し、脾臓摘出術を行うことが可能となった。フアイア糖鎖TPG-1の給与開始後、約1ヶ月半は転移もなく良好な状態を維持した。その後、右心耳への転移に伴い複数回心タンポナーデを引き起こしたが、プレドニゾロンの適切な投与とフアイア糖鎖TPG-1の継続により、その都度心嚢水が速やかに消失した。
      腫瘍が増大し心機能への負荷がかかる状況下にあっても、体重が増加傾向(7.55kg→8.3kg)を示し、1度目のタンポナーデ発症後もご家族が「とても元気」と感じられるほどの旺盛な食欲と活力を取り戻した。

       

      考察

      治療のポイント:
      スケーリングの事前検査から短期間で破裂に至るほど進行が早い血管肉腫において、プレドニゾロン(0.7mg/kg SID 〜 1.2mg/kg SID)による対症療法が、心嚢水の貯留(心タンポナーデ)コントロールに著効を示した症例である。腫瘤の物理的な増大は止められなかったが最後までQOLを維持できていた。

      併用による相乗効果:
      通常、進行性の血管肉腫で抗がん剤を行わない場合、術後1ヶ月から1.5ヶ月程度でQOLが低下するケースが多い中、本症例は丸3ヶ月間にわたり良好なQOLを維持して生存した。一時的な体調悪化を乗り越え、Day57やDay94に記録されている「食欲がすごい」「体調が戻る」といった活力の回復や持続的な体重増加が認められている。これは、フアイア糖鎖TPG-1の併用が全身の免疫や代謝に関与した可能性が示唆される。

       

      結語

      抗がん剤を用いないと決断した飼い主様にとって、進行が早く厳しい見通しの中でも、ご家族が「とても元気」と感じられる穏やかな時間を延長できた本症例のアプローチは、進行性腫瘍を抱える動物の終末期ケアにおいて、動物自身とご家族に納得感と希望をもたらす選択肢の一つになり得ると考えられる。

      本資料は動物医療関係者向けの学術的参考情報です。一般飼い主向け広告ではなく、特定の疾病に対する診断、治療、予防または効果を保証するものではありません。本品は動物用医薬品として承認されたものではありません。無断転載・転送・一般飼い主への配布を禁じます。