【症例】慢性的なSAA上昇(腎盂腎炎疑い)の猫
症例提供:神奈川県内 動物病院(獣医師)
慢性的なSAAの異常高値や腎盂腎炎が疑われる症例に対し糖鎖製剤(TPG-1)の給与を併用し良好なQOLの維持が認められている症例
糖鎖製剤(TPG-1)使用概要
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給与量 |
給与期間 |
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2倍量 |
14日間 |
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1倍量 |
858日間〜 |
※犬猫用フアイア製品として
症例基本情報
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品種 |
猫(アメリカン・ショートヘア) |
| 年齢/性別 | 7歳(2019年1月12日生)/避妊雌 |
| 初診日 | 2023年7月30日 |
| 主訴 | 腎数値およびSAAが下がらないことによる他院からの紹介来院 悪心・下痢 |
| 既往歴/背景 | ペットショップにてFIV/FeLV陰性、コロナウイルス抗体陽性、遺伝子検査にて、多発性嚢胞腎遺伝子検査陽性、と伝えられている。 |
症例概要
【検査・診断】
初診時、普段2.8kgほどある体重が2.6kgまで減少していた。血液検査においてSAAが73.71 μg/mL、
WBCが21,100/μl と上昇しており、BUN(41.2 mg/dl)、CRE(1.95 mg/dl)の腎数値高値も確認された。
同時に画像検査にて腎結石、膀胱結石が確認され、細菌性膀胱炎(E.coli感染)と診断された。
臨床症状とSAAの持続的な高値から確定診断には至っていないものの、「腎盂腎炎」が疑われる病態であった。
【課題の特定】
抗生剤や対症療法を行っても、SAAのコントロールができず、体調を崩すたびに数値が100前後(ひどい時は225超)まで急上昇してしまうという、慢性的な数値の下げ止まりが課題であった。
治療経過・併用戦略
導入期:
初診以降、セフォベシンナトリウムの皮下注射(8mg/kg)やオルビフロキサシン(10mg/SID)などの抗生剤投与、およびインターキャット(2MU/kg)の追加、連日の皮下点滴を実施。Day56からはベラプロストナトリウム(SID)を追加し、自宅にて100ml(SID)の皮下点滴を継続した。これらの治療で体調はある程度改善し、Day109には体重も2.8kgまで戻ったが、SAAの数値自体は下がりきらない状態が続いた。
調整期:
慢性的な感染がコントロールできない本症例に対し、体重が3kgを超えたDay156よりフアイア糖鎖TPG-1の給与を開始した。最初の2週間は2倍量で導入し、その後は1倍量へ切り替えるアプローチを取った。
維持期:
フアイア糖鎖TPG-1開始後、SAAは改善し10前後にまで落ち着いた。Day317ごろに右尿細管結石による尿管閉塞時や、Day675の一時的な体調不良時にはSAAの上昇が認められたが、適切な処置(セフォベシンナトリウム20mgの追加注射など)により速やかに回復。その後は再び安定し、体重も3.1kg~3.3kgの間を推移しており、現在に至るまで大きな数値上昇もなく良好な状態を維持している。
臨床経過・データ推移
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経過時期 |
フアイア糖鎖 |
体重 |
SAA |
WBC |
BUN |
CRE |
治療内容 |
備考/状態 |
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Day 0 |
- |
2.6 |
73.71 |
211 |
41.2 |
1.95 |
抗生剤、インターキャットなど対症療法 |
初診。 |
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Day 5 |
- |
>225 |
287 |
35.7 |
2.46 |
オルビフロキサシン 10mg SID、連日皮下点滴 |
体調悪化、発熱 |
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Day 109 |
- |
2.8 |
>225 |
44 |
26.9 |
1.68 |
既存治療継続 |
SAA再上昇 |
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Day 156 |
2 |
3.0 |
- |
- |
- |
- |
フアイア糖鎖TPG-1開始 |
2週間は2倍量 |
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Day 174 |
1 |
10.09 |
69 |
36.1 |
1.88 |
フアイア糖鎖TPG-1 |
SAAが低下 |
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Day 317 |
1 |
3.3 |
25.12 |
117 |
45.6 |
3.70 |
(2日後に尿管結石OPE実施) |
右尿管閉塞による悪化 |
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Day 675 |
1 |
3.1〜3.3 |
52.11 |
214 |
20.9 |
0.2 |
セフォベシンNa 20mg注射 |
嘔吐・食欲不振。GPT126/ALP222 |
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Day 882 |
1 |
8.85 |
78 |
29.7 |
2.00 |
フアイア糖鎖TPG-1 |
SAAキープ |
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Day 1032 |
1 |
7.48 |
103 |
30.0 |
2.12 |
フアイア糖鎖TPG-1 |
体調の維持 |
【変化の要約】
フアイア糖鎖TPG-1導入前は、抗生剤やインターキャットを用いてもSAAが数十〜225超の高い水準で推移し、コントロールが難しい状況であった。Day156の給与開始直後からSAAが10前後へと安定し、初診時に2.6kgまで落ちていた体重も3kg台まで回復した。Day675には一時的な体調不良によりSAAが52.11まで上昇したが、標準治療により回復し、その後は体重も安定して推移し、外観や活力面でも「ずっといい状態をキープできている」と飼い主様が実感されている状況である。
考察
治療のポイント:
多発性嚢胞腎遺伝子陽性という基礎疾患を抱え、慢性的な腎盂腎炎・膀胱炎を繰り返す本症例において、抗生剤でのアプローチによりSAAが下がりきらなかった。ここにフアイア糖鎖TPG-1を併用したことで、良好な免疫状態の維持に寄与した可能性があり、結果的に持続的な炎症コントロールに直結したと推察される。
併用による相乗効果:
標準治療に加え、フアイア糖鎖TPG-1を上乗せすることで、長らく下がらなかったSAAに良好な推移が観察された。Day675のような一時的な急性増悪時においても、基礎的な免疫力が整えられていたことで、抗生剤の反応性がよく、早期回復に繋がったと考えられる。難治性の慢性炎症において、自己の健やかな免疫力の調整を行うアプローチがQOLの維持に貢献する可能性があると示唆される。
結語
感染コントロールが困難な高齢猫や基礎疾患を持つ症例に対して、抗生剤などの標準治療にフアイア糖鎖TPG-1を組み合わせることが治療の選択肢の一つとなることが示唆される症例である。数値(SAA)や体重の推移として客観的に治療効果を確認することで、飼い主様の治療への納得感や希望にも繋がりやすく、今後の類似症例においてもモニタリングを行う上で有用な知見が得られた一例と言える。