【症例】トイプードルの慢性腸症(PLE / IRE)におけるフアイア糖鎖TPG-1(4倍量)併用事例
症例提供:東京都内 動物病院(獣医師)
犬の免疫抑制薬反応性腸症(IRE)/食事反応性腸症(FRE)に対し、加水分解食と糖鎖製剤(TPG-1)やプロバイオティクスによりステロイド休薬を達成した症例
糖鎖製剤(TPG-1)使用概要
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投与量 |
投与期間 |
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2倍量 |
98日 |
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3倍量 |
140日 |
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4倍量 |
継続中 |
※犬猫用フアイア製品として
症例基本情報
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品種 |
トイプードル |
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初診日 |
2022年11月11日 |
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主訴 |
健康診断にて偶発的に低アルブミン血症と微量の腹水を発見。 |
症例概要
【病態と課題】
健康診断時の血液検査において、Alb 1.6 g/dL(RI:2.6–4.0)と中等度の低アルブミン血症を伴う汎低蛋白血症が認められ、さらに微量腹水も確認された。当初は無症状であったが、診断直後に急性膵炎を発症した。その後、内視鏡検査などを経て、リンパ球形質細胞性腸炎(LPE)および蛋白漏出性腸症(PLE)、(IRE/FRE)と診断された。
初期治療として、低脂肪食、シクロスポリンおよびプレドニゾロンによる治療を行ったところ、Albは寛解に至ったが、慢性下痢は改善しなかった。そこで食事を加水分解食に変更したところ、数日で下痢は改善した。
その後、プレドニゾロンおよびシクロスポリンを休薬したが、PLEが再燃した。シクロスポリンの再開によりAlbは再び改善したものの、投薬が困難であったため、最終的にプレドニゾロン単剤での治療となった。しかし、プレドニゾロンは休薬できず、長期・低用量投与に伴う重度の高脂血症、肝酵素上昇、筋萎縮、筋力低下、脱毛などの全身性副作用が認められた。
そのため、本症例ではPLEの管理を維持しながらプレドニゾロンを減量・休薬すること、すなわち「ステロイドコントロール」が重要な課題となった。
治療経過・併用戦略
治療は、病態の変化に合わせて以下の3つのフェーズで展開した。
- Phase 1: 急性膵炎の管理とLPEの確定診断(Day 1〜)
急性膵炎の集中治療(輸液、抗生剤、マロピタント、フザプラジブナトリウム、クロピドグレル、人血清アルブミン等)を開始。その後、Day27に内視鏡検査を実施し、LPEと確定診断、プレドニゾロン(0.9~1.5mg/kg/SID)とオメプラゾール(1mg/kg BID)を開始した。PLEに対しての治療中に再度急性膵炎を発症したため、前回発症した際の治療に加えメトクロプラミドの持続点滴(2mg/kg/day)を行った。急性膵炎の寛解後にプレドニゾロンの減量のために、シクロスポリン(50mg/head SID)を開始した。低脂肪食で管理をしていたが下痢が止まらなかったため、加水分解食(z/d®)へ変更した直後に下痢が消失した。これにより食物抗原に対する過剰反応(食物反応性腸症:FRE)の関与も考えられた。 - Phase 2: ステロイド副作用の顕在化とフアイア糖鎖TPG-1の導入(Day 300前後〜Day900前後)
脱毛、筋力低下、TGの増加(TG>450 mg/dL)など、さまざまな有害事象が認められ、当初はプレドニゾロンの副作用が疑われた。しかし、軽度貧血も併発していたため甲状腺パネルを測定したところ、甲状腺機能低下症が追加で診断された。
プレドニゾロンによる副作用が懸念されたため、ステロイドの休薬を試み、さらにその後シクロスポリンも休薬した。しかし、PLEが再燃したためシクロスポリンを再開した。シクロスポリンの再開後、Albは改善したものの、犬がシクロスポリンの投薬を強く嫌がり、継続的な投薬が困難であった。そのため、シクロスポリン単剤での維持は現実的ではなく、最終的にプレドニゾロン単剤での維持を余儀なくされた。
しかし、プレドニゾロンの長期投与に伴い、脱毛、筋萎縮、高脂血症などの副作用が認められ、プレドニゾロンの減量または休薬が望まれた。ステロイドに起因する高脂血症を是正する目的でフェノフィブラートなどの使用も検討されたが、根本的な解決にはステロイドからの離脱が必要と考えられた。そこで、ステロイド離脱を目的として、フアイア糖鎖TPG-1およびプロバイオティクスを導入した。 - Phase 3: 完全休薬と長期維持(Day 900以降〜現在)
フアイア糖鎖TPG-1併用下でプレドニゾロンの漸減を進め、Day 954にステロイドの休薬を実施。休薬に伴い高脂血症は正常化した。しかし、休薬後Day 1143にアルブミン値が2.5 g/dLへと低下する兆候が見られた。フアイア糖鎖TPG-1製剤を「4倍量」へ増量した結果、Day 1178にはアルブミン値が2.8 g/dLへと回復し、現在もステロイドの休薬ができている。
臨床経過・データ推移
長期間(約3年間)にわたる経過のうち、治療の転換点となるデータを以下に抜粋する。
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経過日数 |
日付 |
体重 (kg) |
Alb (g/dL) |
TG |
プレドニゾロン投与量 |
備考 |
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Day1 |
22.11.11 |
- |
1.6 |
178 |
- |
初診時 低タンパク血漿から、腹水の貯留が認められPLEを疑う。 |
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Day3 |
22.11.13 |
- |
2.1 |
- |
急性膵炎として診断治療開始 |
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Day27 |
22.12.07 |
- |
2.5 |
1.3mg/kg/SID |
内視鏡を実施し、PLEの確定診断がつく。 |
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Day39 |
22.12.19 |
- |
2.8 |
1.5mg/kg/SID |
シクロスポリンの開始 |
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Day128 |
23.03.18 |
- |
2.8 |
0.9mg/kg/EOD |
z/d開始 |
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Day302 |
23.09.08 |
- |
3.5 |
838 |
0.4mg/kg/TOD |
レボチロキシン開始 |
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Day456 |
24.02.09 |
- |
2.3 |
133 |
休薬 |
シクロスポリン再度開始 |
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Day580 |
24.06.12 |
5.4 |
2.1 |
72 |
0.9mg/kg/EOD |
Alb低値のためステロイド再開 |
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Day608 |
24.07.10 |
5.24 |
3.2 |
>500 |
q96hへ変更 |
ステロイド減量 |
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Day631 |
24.08.02 |
5.4 |
2.9 |
>500 |
半量へ変更 |
ステロイド減量 |
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Day659 |
24.08.30 |
5.0 |
3.0 |
>500 |
週一内服へ変更 |
ステロイド減量 |
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Day688 |
24.09.28 |
5.36 |
2.5 |
384 |
q96hへ増量 |
Albがやや落ちたため増量 |
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Day716 |
24.10.26 |
5.1 |
2.4 |
- |
EODに |
ステロイド調整 |
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Day905 |
25.05.03 |
- |
3.6 |
- |
EOD継続 |
フアイア糖鎖TPG-1投与2倍量開始 |
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Day1003 |
25.08.09 |
- |
2.9 |
92 |
STOP(Day926で半量にしてDay954でストップ) |
フアイア糖鎖TPG-1の投与量を3倍量に増加 プロバイオティクス開始 |
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Day1143 |
25.12.27 |
5.1 |
2.5 |
107 |
- |
フアイア糖鎖TPG-1の投与量を4倍量に |
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Day1178 |
26.01.31 |
5.28 |
2.8 |
139 |
- |
経過確認中 |
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Day1220 |
26.03.14 |
- |
2.9 |
- |
- |
フォローアップ中 |

→全期間での推移をグラフで表したもの

→フアイア糖鎖TPG-1投与後のデータの推移を表す。
考察
本症例の経過から、プレバイオティクスおよびフアイア糖鎖TPG-1は、プレドニゾロンに代替し得る補助療法となる可能性が示唆された。
本症例では、PLEの管理にプレドニゾロンが必要であり、休薬は困難であった。そのため、長期間のプレドニゾロン内服を余儀なくされていた。そこで、プレドニゾロンからの離脱を目的として、プレバイオティクスおよびフアイア糖鎖TPG-1を併用した。
しかし、Day 1143にはAlbが2.5 g/dLまで低下し、明らかな治療効果は認められなかった。そこで、フアイア糖鎖TPG-1を試験的に4倍量へ増量したところ、35日後の再診時にはAlbが2.8 g/dLまで上昇し、その後もAlbを維持することができた。
この経過から、治療効果が時間依存性に発現した可能性は否定できないものの、フアイア糖鎖TPG-1の増量に伴う免疫調節作用により、PLEの寛解維持に寄与した可能性が考えられた。
以上より、食事療法およびプレドニゾロンで管理しているものの、プレドニゾロンの休薬が困難なPLE症例において、プレバイオティクスおよびフアイア糖鎖TPG-1の併用は、ステロイド依存性を軽減する新たな補助療法となり得る可能性が示唆された。